【C:B】ちいさな王さま

昔のあたしは今よりも鈍臭くて、周りから馬鹿にされるような子供だった。
今はワンダーランドに住んでいるけど、実家は牧場、オズの片田舎だったから人間関係もずっと変わらない。あたしは虐げられたままこの場所でずっと生きていくと思っていた。
そんなあたしにも現実を忘れられる瞬間があった。

家族の目を盗み牧場の端、雑木林に駆け込む。最近は暖かくなって草が生い茂って、子供のあたしがしゃがめばすぐ見えなくなる。
草むらには色んな虫が飛んだり這いつくばったり忙しなく動いている。見繕って、あたしは近くの虫をわし掴む。
ぐちゃりと粘性の音が鳴る。あたしはすかさず別の虫を掴む。手が汚れることなど構わずに、むしろ汚れれば汚れるほど達成感が湧き上がる。
蝶は捕まえにくいんだよな。ひらひらと逃げる中、鈍臭いひとつを捕まえる。
｢捕まえた｣
左右の羽を開く。4枚の羽をひとつずつ剥がして捨てる。
この瞬間だけは、あたしの思うがままだったのだ。

嫌な子供【illust/97914185】