聞いてたらできてた
隣には彼がいた。…ここは、どこだっただろうか。
たしか、ここ最近は、一息つく暇もないほどものすごく忙しかったような気がする。
私たちは町を訪れていた。目的地もなく、あっちに行っては品物を見たり、こっちに行ってはおいしいものを食べたりして、フラフラと町をさまよっていた。
前を歩く彼の表情は読めない。ただ、つかの間の休息にこうして二人でいられることに自分の心が浮きたつのを感じた。
振り返った彼が私を呼ぶ。てっきり、彼も楽しんでいるのだと思ったが、その表情はそれとは少し違っていた。
どうしようもなく不安になり、なんですか?と問いかける。長い沈黙があった。
「……いや、…何でもない」
たしかにこちらを見ているのに、独りでいるかのような表情をしていた。
さっきの沈黙に多くの思いが込められているような気がして、もどかしくなった。
「どうしてそんなに悲しそうなのですか?」
悲しそう?そんな風に見えたのだろうか。うまく彼の顔が見れない。
「しょかつりょう、そなたのほうが…」
その先はよく聞き取れなかった。聞きたくなかったのかもしれない。
おもむろに彼は私の頬を撫でた。久しぶりに感じる彼の掌の感触に、何かがどうしようもなく満たされてく感じがした。私は楽しくなって、思わず笑ってしまうのを抑えられなかった。
さっきまで複雑そうな顔をしていた彼が、私の表情をじっと見てから、ゆっくり微笑んだ。
ああ、よかった、とても幸せな気分だった。彼も喜んでくれていたのだ。
いつの間にか町も人もどこかに消えてしまっていた。
はたして私たちはどうやってここにやって来たのだろうか。
今はそんなことどうでもいい。
もう少しだけ。
「しょかつりょう」
彼が私を呼んだ。やっぱり、彼の顔をうまく見ることができなかった。
「楽しかったな。」
どうしてか、いままで彼の声が一つも聞こえていなかったことに気付いた。
たしか、ここ最近は、一息つく暇もないほどものすごく忙しかったような気がする。
私たちは町を訪れていた。目的地もなく、あっちに行っては品物を見たり、こっちに行ってはおいしいものを食べたりして、フラフラと町をさまよっていた。
前を歩く彼の表情は読めない。ただ、つかの間の休息にこうして二人でいられることに自分の心が浮きたつのを感じた。
振り返った彼が私を呼ぶ。てっきり、彼も楽しんでいるのだと思ったが、その表情はそれとは少し違っていた。
どうしようもなく不安になり、なんですか?と問いかける。長い沈黙があった。
「……いや、…何でもない」
たしかにこちらを見ているのに、独りでいるかのような表情をしていた。
さっきの沈黙に多くの思いが込められているような気がして、もどかしくなった。
「どうしてそんなに悲しそうなのですか?」
悲しそう?そんな風に見えたのだろうか。うまく彼の顔が見れない。
「しょかつりょう、そなたのほうが…」
その先はよく聞き取れなかった。聞きたくなかったのかもしれない。
おもむろに彼は私の頬を撫でた。久しぶりに感じる彼の掌の感触に、何かがどうしようもなく満たされてく感じがした。私は楽しくなって、思わず笑ってしまうのを抑えられなかった。
さっきまで複雑そうな顔をしていた彼が、私の表情をじっと見てから、ゆっくり微笑んだ。
ああ、よかった、とても幸せな気分だった。彼も喜んでくれていたのだ。
いつの間にか町も人もどこかに消えてしまっていた。
はたして私たちはどうやってここにやって来たのだろうか。
今はそんなことどうでもいい。
もう少しだけ。
「しょかつりょう」
彼が私を呼んだ。やっぱり、彼の顔をうまく見ることができなかった。
「楽しかったな。」
どうしてか、いままで彼の声が一つも聞こえていなかったことに気付いた。
17
24
715
2022-12-31 21:26
Comments (0)
No comments