改造少女(AI)

「格好よく写してちょうだい。次の大会が私のデビューになるんだから」

撮影のための白黒の背景をバックにして彼女はポーズをつけた。彼女の手足はぱっと見ると義足・義手のように見えるが、実際には体内にも多くの機械が詰め込まれている。彼女は来年開催されるサイバスロンにエントリーする目標を立てている。そのためには、まず国内の大会に出て優秀な成績を収めなければならない。

「オッケー！　じゃあ、目線をカメラに向けてくれる？」

アスリート専門のカメラマンはそう言って彼女に指示を出した。彼女はいくつかポーズを取り、その旅に高速なシャッター音がスタジオに鳴り響く。

「よい、オッケー！終わりだよ」

カメラマンがそう言うと彼女は「ありがとうございます」と言いゆっくりと頭を下げた。

「大会頑張ってね。君なら世界に勝てるかもしれないよ」

「そうね。勝たなきゃ、この体になった意味がないわ。そうでなきゃ自分自身が報われないもの」

彼女は少し陰りがある顔を見せ、しばらくしてため息をついた。ため息をついたはずだが、それは彼女の感覚イメージだけのものだった。まわりで見ている人間にとってはため息したことすら分からない。彼女は競争用のマシンとして改造され、もはや人間のような行為はほとんどできなくなっていたのだ。

終