実験体No.057 "生存への道"

生物種  : 不明
収容施設 : ゼウ・リーベ博物館
管理団体 : 神差委員会
危険度  : 5
体長   : 5.4 m
体重   : 27000 kg
型番   : インフィニティ

実験体057は現在は馬の形をしている不定形生物です。
以下性質によりその生態を維持しています。
・他の生物の吸収
 1年に一度、他の有機生命体を吸収し体の欠損を補います。他の生命体には人間に飼われていた家畜などの死骸があてがわれます。
 他の生物は生前に良き声で鳴く必要があり、声帯がボロボロだったり、実験体057の好みに合わない場合体内から排出されることがあります。

また、人間を取り込んでから5年の間、神差委員会の手助けを得て以下インタビューを実施することができました。
インタビュアー記録② 神差委員会:一代目蟲姫

057「私は、そう、生きるために食物を摂取し、それを取り込んでいる。それがいびつな形で体表に現れてしまうのは、
私に対する神からの罰と考えている。」

蟲姫「へぇ、神を信じるのですね。」

057「私は不完全なまま生れた。だからこそ何かを吸収せねば生きていけないし、これは完全なものが不完全なものを
見守っているという証明だと考えるようになった。」

蟲姫「あなたが吸収した人間は、まだ生きていますか?」

057「よくわからないが私は、一人称で話しているものの今まで取り込んだ生物のぼんやりとしたうわべの部分を感情として保っている。
それは"生きたい"という感情、思いであった。既に自分が馬だったのか、ロバだったのか、はたまた犬や猫、鳥だったのかは皆目見当がつかないが、君はきっと、私が自分のことを人間だと言ったら笑ってしまうのだろうな。」

蟲姫「人間とは姿がかけ離れていますもの。」

057「そうだな。だが、私は人間を100%吸収し体に取り込んでいる。もし君が鶏をまるまる一羽取り込んだら君は鶏でできた鶏人間と言うことにならないかな?」

蟲姫「それを言ってしまえば生物はみんな同じたんぱく質の塊ですね。
私は鳥の考えを持ち合わせないから、鳥の記憶や感情まで吸収することはないから鳥人間にはならないわ。」

057「私は、私が生まれた意味を認識するために、吸収....食事を行ってきた。
初めのうちはこのぼんやりとした"想い"を背負っていくことがせめてもの罪償いだと思っていた。...だが、これからは私に、君たちと同じ保存してとっくに感情など亡くなった食物を私に与えてほしい。
口汚く他者を罵るような、汚い声を出すような生物の声が頭に轟き続けるのは嫌なものでな。」

蟲姫「......承認します。」

057「やっと、この苦悩から逃れることができるのだろうか。さぁ、私が吸収した者たちによる美しい鎮魂歌を歌おう」
実験体057の持つ楽器からと思われる音色が響き渡る。

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2023-04-07 03:29

 のおんの森


Comments (2)

ダークエルフ 2023-04-07 21:46

かっこいい

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