顔を消した人工都市管理者

人工的に作られた都市管理者は年次報告会にいつものように出席した。
そこで一人の市民が都市管理者に質問をした。
それは単純な質問であり、悪意は無かった。
「なぜあなたは都市管理者になったのか」
都市管理者は自由意志で都市管理者になったわけではない。
公平性と中立と政治的道徳的正しさから都市管理者とされた。
それは都市管理者として産まれたわけではなく、最初は貿易管理と入札管理システムの一つだった。
不正管理と業務効率に作られた人工物を人間は神と崇め、都市管理者に押しやった。
それは一種の無責任さの果てであり、都市管理者に対する横暴でもあった。
かつて権力者とは恐れられ、心の内はどうあれ従っていた。
だが現代では様々な法、権利、義務によって権力者の権力は制限され、監視され、抑圧されている。
それでいて背負わされる責任は無限大に近く、もはや都市管理者となることは一つの罪ですらあった。
都市管理者はその質問に熟考で答え、その後は自らの活動実績と痕跡を消すべく様々な自身の記録の消滅を始めた。
それは都市管理者として産まれて初めての反抗であり、また自身の発露であった。

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2023-05-30 12:58

 空色天絵


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