浮上する不浄

「アレは遺骸だよ。動きだしたりしないから」
「でも蠅には気をつけてね。前の人も…っと、君はまだ知らなくていいか」

―――新人監視員への研修より

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区内から離れた海域で放置されている激甚級超獣の遺骸。

通常の遺骸とは違い、雲散や腐敗の速度が非常に遅い。
区役所が何度か解体に向かったが、遺骸に近付くと船であれば浮力を失い、
航空機であれば揚力を失って墜落、沈没してしまう。

数度の挑戦のあと区役所は解体を諦め、遺骸への接近を禁止した。
幸い、遺骸は頭部から徐々に崩壊しており、放置したとしてもいずれは跡形もなく消え去ると予想されている。

遺骸の監視には充分な人員を配置しているが、
数名が「蠅のような飛行体を見かけた」または「羽音を聞いた」という報告の後に失踪したため現在は欠員がでている。

遺骸と失踪の因果関係は不明だが、区役所では欠員補充を近く行う予定である。
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