聖なるかな、聖なるかな、万軍の主(サバオート)

グノーシス主義におけるサバオート（しばしばサバオト、サバオスとも表記される）の概念は、旧約聖書における「万軍の主」という意味を持つヘブライ語の言葉から来ています。しかし、グノーシス主義においては、この概念は大きく異なる意味を持ちます。

グノーシス主義は古代の宗教的・哲学的思想であり、キリスト教の教義と異なる観点から霊的真理を解釈しています。この思想においては、物質世界は低次の神、デミウルゴスによって創造されたとされ、この世界は欠陥があると見なされます。サバオートは、このデミウルゴスや他の低次の神々（アルコン）とは異なり、より高次の霊的領域に属する神性とされることが多いです。

特に、サバオートはしばしば、物質的な創造物とは区別された、より高次の神的存在や精神性の象徴として描かれます。いくつかのグノーシス文献では、サバオートは反逆者として描かれ、デミウルゴスの支配から脱し、真の神へと向かう霊的進化のプロセスを助ける存在とされています。

グノーシス主義の文献におけるサバオートの解釈は多岐にわたりますが、ここではいくつかの主要な文献におけるサバオートの描写とその解釈を紹介します。

1. ナグ・ハマディ文書
ナグ・ハマディ文書は、グノーシス主義関連の重要な一次資料のコレクションです。この中のいくつかの文書ではサバオートの言及が見られますが、その役割や性質は文献によって異なります。

『アポクリュフォンのヨハネ』: この文書では、サバオートがデミウルゴス（低次の神、この世の創造者）の一部として描かれていますが、後に高次の神的実体へと進化します。サバオートは、自らの起源と真の神への認識を得ることにより、物質的創造から離れる過程を経験します。

『ヒポスタシスの書』: ここでは、サバオートはより積極的な役割を持ち、デミウルゴスの支配から脱し、真の神との結びつきを求める霊的存在として描かれます。彼はまた、神的認識を人類にもたらす者とされることもあります。

2. ピストイス・ソフィア
ピストイス・ソフィアは、グノーシス主義の教えを詳細に説明した文献であり、サバオートはここでも重要な役割を持ちます。サバオートは、高次の光の領域の中で特定の役割を果たす神的存在として描かれています。この文献では、サバオートが霊的進化の過程における重要な段階を代表していることが強調されます。

3. セト派の文献
セト派はグノーシス主義の一派であり、彼らの文献ではサバオートが異なる解釈を受けることがあります。セト派では、サバオートはしばしば、物質世界とは対照的な、霊的な真実を象徴する存在として扱われます。彼は、デミウルゴスや他の低次の神々とは区別され、真の神への道を示す指導者と見なされることがあります。

火星は、その行動力、闘争、勇気、そして衝突の特性から、古代から多くの文化で戦いや戦争の神と関連づけられてきました。火星のこの性質は、古代ローマの戦争の神マルスや、ギリシャ神話のアレスといった神話的人物との関連からも明らかです。これらの特性は、力、権威、または反逆の精神を象徴する存在としてのサバオートと比較することで、ある種の象徴的な対応を見出すことができます。

サバオートがグノーシス主義の文脈で高次の神的存在や真の神に反逆する力として描かれる場合、その反逆の精神や権威に挑む姿勢は、火星が象徴する行動力や勇気と共鳴するかもしれません。また、サバオートがデミウルゴスの支配からの解放を求める力として描かれることがあるように、火星のエネルギーが個人または集団が直面する障害や制約からの解放を促進する力として解釈されることがあります。