C15 過去と今後③
「…つまり、トレーナーさんは短期のつもりで言った、アタシはずっと移籍だと勘違いしたと」
「そういうことになりそうだな」
放課後のトレーナー室で俺はナイスネイチャとこの間の振り返りをしていた。
彼女は今日1日は授業も休んでいたようだ。いつもの張り詰めた感じは今日はなく、気だるそうな雰囲気を出している。
器物破損の件についてはたづなさんからは何も言われなかった、理事長とどうにか処理をしたのだろう。
「…でも、トレーナーさんはいなくなりました」
「ああ、そればっかりは本人を捕まえてみないとわからない。中央のトレーナーってのは変になんでもできるやつが多い、あいつが本気で姿を現さないとなると、それなりに時間がかかりそうだ…退職願いはたづなさんが留めているらしい」
この仕事、退職も好きにできないのか…?という事はすごく引っかかったが今回はその対応はありがたかった。
「だが…そういうわけだ、トレセン学園のトレーナー捜索能力は優秀だ…なぜか無人島に行ったりするやつがいるらしいからだが…待ってればトレーナーはそのうち現れる、お前が無理をして走る理由はない」
そういうと、ナイスネイチャは1分ぐらいじっくり考えた後、答えた。
「…走ります」
「ナイスネイチャ」
「アタシは、走り続けないと…勝ち続けないといけないんです」
「トレーナーさんと一緒にいたのは…すごく、すごく楽しかったんです。だから、結局アタシが甘えてたから、トレーナーは愛想をつかしました」
そういって微笑む彼女の顔は、皮肉げに歪んでいた。
「アタシが、走り続けることをやめたら…勝ち続けることをやめたら、トレーナーさんには二度と会えない」
「アタシの行いが原因なんです…だから今、走らなきゃ…」
走りたい、勝ちたい、ウマ娘の本能は基本この二つを兼ね備えている、だから単に勝ちたいから、でも良い。
しかし彼女の動機は…贖罪をまるでしようとしているかであった。
なら彼女が現段階では止まる事はないだろう…限界までは走るに違いない。
「ここからは以前のようなトレーニングはさせないぞ、お前の選手生命に関わる」
しかし釘を刺す必要はあった、そう告げるとナイスネイチャは、少し考えた上で聞いてくる。
「あのトレーニングでアタシはどれくらい持つと思いますか」
「…1年も持てば奇跡だろう、6ヶ月以内には故障すると思ったほうがいい」
すでに現段階でも3ヶ月休みなしでトレーニングを続けているのである、しかも通常の倍から3倍近いトレーニングを。
肉体への疲労もさることながら精神面での疲労も積み重なっている、油断によりあっという間に崩壊をしかねない危険な状態であった。
「…6ヶ月も持つんですね」
「ナイスネイチャ」
「大丈夫ですって、しませんよ」
微笑むナイスネイチャの表情は柔らかく、普段の真面目な雰囲気とは違う珍しさがあった。俺には見せないが普段は実はこんな感じなのかもしれない。
「よく聞け」
「はい」
「お前の今の状態はケア込みで維持ができている、だから隠れてトレーニングをすると破綻するぞ」
「分かってます」
「今回は無理に無理を重ねてここまできた、しかし今回のようなパフォーマンスは出ないと思っておけ、できて…現状維持だ」
いくら選手としての能力を底上げしてもやはり限界はある。
はい、と素直に頷くナイスネイチャをみて、限界だと伝える苦々しさと同時に、俺は不安に囚われていた。
こいつは限界を越えるためなら自分のケアすらも身につけてしまうかもしれない、必要ならば。必要ならば、何もかも取り入れる強さと、何もかも犠牲にできる危うさが今の彼女にはあった。
「それで、お前はどうするつもりだ」
「春の3冠を目指します」
「次は大阪杯か」
「はい」
「分かった」
話は終わりだと手を軽く振ってナイスネイチャを下がらせる。一礼してトレーナー室から出ようとした時、ナイスネイチャはこちらに聞こえるか聞こえないかの小さな声で言った。
「シュヴァル」
「ん?」
「トレーナーさんはシュヴァルを面倒見てました」
「そう聞いてる、たまに手伝っていたらしい」
「アタシもシュヴァルぐらい真面目な子だったら」
「トレーナーさんはいなくならなかったのかな」
「…」
その質問に答えるものを俺は持っていなかった。
「そういうことになりそうだな」
放課後のトレーナー室で俺はナイスネイチャとこの間の振り返りをしていた。
彼女は今日1日は授業も休んでいたようだ。いつもの張り詰めた感じは今日はなく、気だるそうな雰囲気を出している。
器物破損の件についてはたづなさんからは何も言われなかった、理事長とどうにか処理をしたのだろう。
「…でも、トレーナーさんはいなくなりました」
「ああ、そればっかりは本人を捕まえてみないとわからない。中央のトレーナーってのは変になんでもできるやつが多い、あいつが本気で姿を現さないとなると、それなりに時間がかかりそうだ…退職願いはたづなさんが留めているらしい」
この仕事、退職も好きにできないのか…?という事はすごく引っかかったが今回はその対応はありがたかった。
「だが…そういうわけだ、トレセン学園のトレーナー捜索能力は優秀だ…なぜか無人島に行ったりするやつがいるらしいからだが…待ってればトレーナーはそのうち現れる、お前が無理をして走る理由はない」
そういうと、ナイスネイチャは1分ぐらいじっくり考えた後、答えた。
「…走ります」
「ナイスネイチャ」
「アタシは、走り続けないと…勝ち続けないといけないんです」
「トレーナーさんと一緒にいたのは…すごく、すごく楽しかったんです。だから、結局アタシが甘えてたから、トレーナーは愛想をつかしました」
そういって微笑む彼女の顔は、皮肉げに歪んでいた。
「アタシが、走り続けることをやめたら…勝ち続けることをやめたら、トレーナーさんには二度と会えない」
「アタシの行いが原因なんです…だから今、走らなきゃ…」
走りたい、勝ちたい、ウマ娘の本能は基本この二つを兼ね備えている、だから単に勝ちたいから、でも良い。
しかし彼女の動機は…贖罪をまるでしようとしているかであった。
なら彼女が現段階では止まる事はないだろう…限界までは走るに違いない。
「ここからは以前のようなトレーニングはさせないぞ、お前の選手生命に関わる」
しかし釘を刺す必要はあった、そう告げるとナイスネイチャは、少し考えた上で聞いてくる。
「あのトレーニングでアタシはどれくらい持つと思いますか」
「…1年も持てば奇跡だろう、6ヶ月以内には故障すると思ったほうがいい」
すでに現段階でも3ヶ月休みなしでトレーニングを続けているのである、しかも通常の倍から3倍近いトレーニングを。
肉体への疲労もさることながら精神面での疲労も積み重なっている、油断によりあっという間に崩壊をしかねない危険な状態であった。
「…6ヶ月も持つんですね」
「ナイスネイチャ」
「大丈夫ですって、しませんよ」
微笑むナイスネイチャの表情は柔らかく、普段の真面目な雰囲気とは違う珍しさがあった。俺には見せないが普段は実はこんな感じなのかもしれない。
「よく聞け」
「はい」
「お前の今の状態はケア込みで維持ができている、だから隠れてトレーニングをすると破綻するぞ」
「分かってます」
「今回は無理に無理を重ねてここまできた、しかし今回のようなパフォーマンスは出ないと思っておけ、できて…現状維持だ」
いくら選手としての能力を底上げしてもやはり限界はある。
はい、と素直に頷くナイスネイチャをみて、限界だと伝える苦々しさと同時に、俺は不安に囚われていた。
こいつは限界を越えるためなら自分のケアすらも身につけてしまうかもしれない、必要ならば。必要ならば、何もかも取り入れる強さと、何もかも犠牲にできる危うさが今の彼女にはあった。
「それで、お前はどうするつもりだ」
「春の3冠を目指します」
「次は大阪杯か」
「はい」
「分かった」
話は終わりだと手を軽く振ってナイスネイチャを下がらせる。一礼してトレーナー室から出ようとした時、ナイスネイチャはこちらに聞こえるか聞こえないかの小さな声で言った。
「シュヴァル」
「ん?」
「トレーナーさんはシュヴァルを面倒見てました」
「そう聞いてる、たまに手伝っていたらしい」
「アタシもシュヴァルぐらい真面目な子だったら」
「トレーナーさんはいなくならなかったのかな」
「…」
その質問に答えるものを俺は持っていなかった。
AI-generated
キャプション小説
caption novel
ナイスネイチャ(ウマ娘)
Nice Nature (Uma Musume)
曇らせ
Clouded
ウマ娘
horse girl
35
73
7277
2024-01-19 10:29
Comments (14)
見返すとネイチャずっと泣いてるな?いいですねぇ!
View Repliesたづな「こんな昼間から、理事長や私に姐さん達ががん首そろえてお前を呼んだ理由…。分かるよな?(元トレーナーに逆らってはいけないオーラを放ちながら)」
View Replies文字制限のため続き 残酷なことを言うとなると···ネイトレを辞めさせなきためには「勝つべきではなかった」んじゃないかなぁ···
View Repliesこれ個人的な意見だけど···勝ち続けてしまうと逆にネイトレは「移籍してからネイチャは勝った」 ↓ 「他のトレーナーには勝たせられて自分では勝たせられていない」 ↓ 「自分はトレーナー失格なのでは」 ↓ 「トレーナーである意味がもう無い」 となって辞めしまったんじゃないかなぁ···
救いは…❗救いはないんですか⁉という気持ちと、 消えたトレーナーを見つけ次第右ストレートで頬殴らなきゃと言う気持ちががが(゜∀。)
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