オーラバトラー・ドヴェルグ
ドヴェルグは、「聖戦士ダンバイン」の物語のなかであえて秘匿されている悲喜劇のオーラバトラーである。
物語を彩るあらゆる人々の陰に、その情けない経歴によって存在を抹消された者たちがいる。
だが人よ、名を問うなかれ。
闇に生まれ闇に死す。それが…「って待てよ。それじゃ話が終わっちゃうじゃんかよ」
はいはい。わかりましたよ。
ショット・ウェポン、ゼット・ライトとともに、バイストンウェル世界に拉致された第三のロボット工学の徒。
それが、ヘッド・フォンだ。
ヘッドは前者ふたりとともに、シュライン・ブレイブ教授に学び将来を嘱望された若き技師であった。
そして、教授の理想とする「天空の龍騎士」という理想のロボットに、三人は新世界でカタチを与えた。
ダンバイン、ドラムロ…そして「マサラグ」。
ショット、ゼットの創り上げた、蒼穹を搭乗者の「オーラ力」の放射によって駆ける巨人騎士に比較して、マサラグの戦闘力はなんら劣るものではなかったが、ヘッドの創造物には決定的に欠けた部分があった。
その背には流麗なマントのような「オーラ・コンバーター」がなかった、マサラグは空を飛べなかったのである。
ドテドテと地を駆けまわるばかりのマサラグの醜態は、ショットやゼットの失笑を買った。
そしてこれを、出資者ドレイク公に披露した時のことを想像し頭を抱える…失笑ではおさまるまい、と。
「ヘッドよ」ショットは忠告した。「悪いことは言わない。アビス・アピア助教授のゲドを与えよう。それを自作と偽れ」
「ゲド!?」
ヘッドは耳を疑った。「あれは飛べるだけの失敗作だろう!マサラグのパワーを思えば、空を飛べることなど…」
「まさに空を飛べることが必要なんだよ。ドレイク公の覇道には」ゼットは苦笑した。「受け入れろ」
ヘッドは青ざめた。そして絶叫した、「み…みんなきらいだあーっ!!」
彼はそのまま、果てしない原野を真っすぐに駆け去っていった。
ショットとゼットは絶句し、お互いの顔を見つめ合った。
やがてショットが言った、「あれって…ギャグ?」
ゼットが答えた、「認めたくないものだな…若さゆえのあやまちというものを…」
長い、重苦しい沈黙ののちに、ショットはゼットに突っ込んだ、「それも…ギャグ?」
空はあまりにも高く、青かった。だが、長い沈黙はどこまでも続いた。
やがて、ゼットは泣きべそ顔でこぼした。「…笑ってくれよお」
次の朝、少数試作されたマサラグの一機が姿を消した。
そして、ドレイク領内で以後ヘッド・フォンの姿を見た者はなかった。
いくらかの時は流れ、ギブン公の領内に立ち入ったドレイク軍の兵士は、いささか飛ぶにはオーラ・コンバーターの小さい見知らぬオーラバトラーを見たという。
そして戦乱が拡大し、マサラグはショットの手で全面改装され、アビス助教授風のスマートなオーラ・コンバーターを得て「ビランビー」と名付けられ前線に出ることになるが、それはずっと先の話である。
前置きが長くなりましたが、ドヴェルグであります。
明らかにドレイク軍最新の技術の粋を集めた本機は、レプラカーンやズワァースに搭載されることになるオーラキャノンを多数備え、飛行時には空気抵抗の少ない形態に変形するなどナの国の新鋭機に影響を与えた先見の明を備えながら、戦乱が地上界にステージを移しても表舞台に出ることはありませんでした。
なぜか。
ジャンプ飛行しかできなかったからです。
そういうわけで、本機はもっぱら力強い両腕を活かして、作業用オーラバトラーとしての余生をおくることとなったのでした。
シーラ女王、そしてチ・フェラリオの女王のお目こぼしもあって、ヘッド・フォンとドヴェルグは故郷ニュージーランドの山林で、元気に作業に勤しんでいることでしょう。
「♬アそれ、かーちゃんのためなら、エーンヤコーラー♪」
物語を彩るあらゆる人々の陰に、その情けない経歴によって存在を抹消された者たちがいる。
だが人よ、名を問うなかれ。
闇に生まれ闇に死す。それが…「って待てよ。それじゃ話が終わっちゃうじゃんかよ」
はいはい。わかりましたよ。
ショット・ウェポン、ゼット・ライトとともに、バイストンウェル世界に拉致された第三のロボット工学の徒。
それが、ヘッド・フォンだ。
ヘッドは前者ふたりとともに、シュライン・ブレイブ教授に学び将来を嘱望された若き技師であった。
そして、教授の理想とする「天空の龍騎士」という理想のロボットに、三人は新世界でカタチを与えた。
ダンバイン、ドラムロ…そして「マサラグ」。
ショット、ゼットの創り上げた、蒼穹を搭乗者の「オーラ力」の放射によって駆ける巨人騎士に比較して、マサラグの戦闘力はなんら劣るものではなかったが、ヘッドの創造物には決定的に欠けた部分があった。
その背には流麗なマントのような「オーラ・コンバーター」がなかった、マサラグは空を飛べなかったのである。
ドテドテと地を駆けまわるばかりのマサラグの醜態は、ショットやゼットの失笑を買った。
そしてこれを、出資者ドレイク公に披露した時のことを想像し頭を抱える…失笑ではおさまるまい、と。
「ヘッドよ」ショットは忠告した。「悪いことは言わない。アビス・アピア助教授のゲドを与えよう。それを自作と偽れ」
「ゲド!?」
ヘッドは耳を疑った。「あれは飛べるだけの失敗作だろう!マサラグのパワーを思えば、空を飛べることなど…」
「まさに空を飛べることが必要なんだよ。ドレイク公の覇道には」ゼットは苦笑した。「受け入れろ」
ヘッドは青ざめた。そして絶叫した、「み…みんなきらいだあーっ!!」
彼はそのまま、果てしない原野を真っすぐに駆け去っていった。
ショットとゼットは絶句し、お互いの顔を見つめ合った。
やがてショットが言った、「あれって…ギャグ?」
ゼットが答えた、「認めたくないものだな…若さゆえのあやまちというものを…」
長い、重苦しい沈黙ののちに、ショットはゼットに突っ込んだ、「それも…ギャグ?」
空はあまりにも高く、青かった。だが、長い沈黙はどこまでも続いた。
やがて、ゼットは泣きべそ顔でこぼした。「…笑ってくれよお」
次の朝、少数試作されたマサラグの一機が姿を消した。
そして、ドレイク領内で以後ヘッド・フォンの姿を見た者はなかった。
いくらかの時は流れ、ギブン公の領内に立ち入ったドレイク軍の兵士は、いささか飛ぶにはオーラ・コンバーターの小さい見知らぬオーラバトラーを見たという。
そして戦乱が拡大し、マサラグはショットの手で全面改装され、アビス助教授風のスマートなオーラ・コンバーターを得て「ビランビー」と名付けられ前線に出ることになるが、それはずっと先の話である。
前置きが長くなりましたが、ドヴェルグであります。
明らかにドレイク軍最新の技術の粋を集めた本機は、レプラカーンやズワァースに搭載されることになるオーラキャノンを多数備え、飛行時には空気抵抗の少ない形態に変形するなどナの国の新鋭機に影響を与えた先見の明を備えながら、戦乱が地上界にステージを移しても表舞台に出ることはありませんでした。
なぜか。
ジャンプ飛行しかできなかったからです。
そういうわけで、本機はもっぱら力強い両腕を活かして、作業用オーラバトラーとしての余生をおくることとなったのでした。
シーラ女王、そしてチ・フェラリオの女王のお目こぼしもあって、ヘッド・フォンとドヴェルグは故郷ニュージーランドの山林で、元気に作業に勤しんでいることでしょう。
「♬アそれ、かーちゃんのためなら、エーンヤコーラー♪」
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2024-03-09 21:30
Comments (18)
そこはかとなくウォーカーマシンに似ているデザインのオーラバトラーですね。
View Repliesバーチャロンだって今をときめくアーマード・コアだって、スラスターを吹かしてちょっと長いジャンプしてるだけだから自信持って!
View Repliesぬははは! こういう与太妄想は大好きなのだ! 飛べない鳥、ヤンバルクイナ!という三悪人ギャグを連想してしまったので、この物語の主題歌には、やはり山本正之節こそ相応しいのでは?
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