Help Me♪大佐(脳内劇場付き)
「Help Me♪大佐」一日一エド&ロイ、2010-07-06分。
午前中の勤務早々、何やら騒がしいと思ったら、廊下を走ってくるのは”鋼の”か。ドアの前で足音は止まり、代わってコンコンとノックの音。
「大佐~居る?」『入りたまえ”鋼の”。子供だと言われたくないなら廊下は走らいように!』
「ははっ、ごめん。早くあんたに会いたくてさ」『は?』意外な言葉に反射的にそう返してしまった。
”鋼の”錬金術師ことエドワード・エルリック。私が国家錬金術師になれるだろう、との言葉にわずか12歳で応えてくれた天才だ。だが、頑固で強気なこの少年は、軍属になって以降も国の命令に背くすれすれのラインで行動しては、私を冷や冷やさせる問題児でもある。様子を見に行けば「出世ばっかり考えてるクソ大佐」だの「あんたには会いたくなかったぜ」だのと、罵声を浴びせられることが常だというのに、いったい何があったというのか。
満面の笑みを浮かべながら軽快に近づいてくると、あろうことか私の机の上に器用に腰を下ろした。
『”鋼の”君は私の仕事を邪魔しに来たのかね?』「あー、なんていうかさ。お願いがあるんだけど」
『はぁ!?』まただ。いよいよエドワードの様子はおかしい。この少年が私を頼るなど、今夜は豪雨でも降らせるつもりでいるのだろうか?
「うう、頼みごとしちゃダメ?」そんな私の顔をのぞきこむように間近にエドワードの顔があった。素直な態度は年相応で大変愛らしく…いや、そうではなくて…。
「大佐?」コホンと咳払いをひとつ、タイミングをずらす。『珍しいじゃないか?君の口からそんな殊勝な言葉を聞く事になるとは思わなかったぞ』
「んー怒ってる?」どうにもこちらの調子が狂う。『そんなことはない…が』
「じゃ、これ!」ニッコリ笑って突き出されたのは請求書の束だった。『何だね?これは』
「すっごい困ってるんだ。財布は落とすわ。トランクは盗まれるわ。アルともはぐれちまったし。そしたらたまたま大佐がここにいるって聞いてすっとんできたんだよ」
『国家錬金術師予算があるだろうが。まさか、銀時計まで盗まれたというのではないだろうな?』
ぶんぶんと首を振り、銀時計をみせられた。ふう、と安心したのもつかの間。『”鋼の”この金額はいったい何だ!?』予想以上の金額に驚いた。軽く半年分以上の研究費に相当するのではないか?
「だ~から、困ってるんだって。国庫から下ろすのには手続きに時間かかるし。その点、大佐ならパパッと払えるだろ?ああ、もちろん借りるだけ、ちゃんと返すから」『しかしだな…』「ええ!?大佐には払えない金額だった?」『むっ』残念そうな最後の一言が神経に障る。
『見くびらないでほしいな。私は君ほど金銭管理は大雑把ではないぞっ』「さっすが大佐!頼りにして良かったぁ」
本当に嬉しそうに笑うので、後には引けなくなってしまった。次の査定に備えて、大口の買い付けを考えていたんだが…。
「なあ、大佐。無理なら、そう言ってくれ。他の方法考えるから」『!』
いかん。つい計算で固まってしまったようだ。子供に心配されるなど、この私がッ。
『安心したまえ!エドワード・エルリック宛の請求書、たしかにこのロイ・マスタングが引き受ける』
「サンキュー大佐!あんた頼りになるよ」『当然だ』
「じゃあ、俺アル探しに行って来る」『ああ…ちょ、ちょっとまて”鋼の”!』
行ってしまった。ふう、とため息をついてしまう。何をやらかしたのか聞く暇も無かったじゃないか。
残されたのは請求書の束だけ。私がこれを燃やして知らん顔を決め込むとは考えないのか?
そこでハッとする。それは今までの彼の姿そのものではないか。頼ってほしいと願っていたのは自分。今はそれが叶ったばかりじゃないか。
ふいに可笑しくなって吹き出してしまった。窓の外を見れば青い空が広がっている。
『なんだ。今日は星空がみられるんじゃないか。ついでにレストランでも予約しておくか』
素直な笑顔を思い浮かべながら、ダイヤルをまわす自分の心も澄み渡るように和んでいくのを感じていた。
午前中の勤務早々、何やら騒がしいと思ったら、廊下を走ってくるのは”鋼の”か。ドアの前で足音は止まり、代わってコンコンとノックの音。
「大佐~居る?」『入りたまえ”鋼の”。子供だと言われたくないなら廊下は走らいように!』
「ははっ、ごめん。早くあんたに会いたくてさ」『は?』意外な言葉に反射的にそう返してしまった。
”鋼の”錬金術師ことエドワード・エルリック。私が国家錬金術師になれるだろう、との言葉にわずか12歳で応えてくれた天才だ。だが、頑固で強気なこの少年は、軍属になって以降も国の命令に背くすれすれのラインで行動しては、私を冷や冷やさせる問題児でもある。様子を見に行けば「出世ばっかり考えてるクソ大佐」だの「あんたには会いたくなかったぜ」だのと、罵声を浴びせられることが常だというのに、いったい何があったというのか。
満面の笑みを浮かべながら軽快に近づいてくると、あろうことか私の机の上に器用に腰を下ろした。
『”鋼の”君は私の仕事を邪魔しに来たのかね?』「あー、なんていうかさ。お願いがあるんだけど」
『はぁ!?』まただ。いよいよエドワードの様子はおかしい。この少年が私を頼るなど、今夜は豪雨でも降らせるつもりでいるのだろうか?
「うう、頼みごとしちゃダメ?」そんな私の顔をのぞきこむように間近にエドワードの顔があった。素直な態度は年相応で大変愛らしく…いや、そうではなくて…。
「大佐?」コホンと咳払いをひとつ、タイミングをずらす。『珍しいじゃないか?君の口からそんな殊勝な言葉を聞く事になるとは思わなかったぞ』
「んー怒ってる?」どうにもこちらの調子が狂う。『そんなことはない…が』
「じゃ、これ!」ニッコリ笑って突き出されたのは請求書の束だった。『何だね?これは』
「すっごい困ってるんだ。財布は落とすわ。トランクは盗まれるわ。アルともはぐれちまったし。そしたらたまたま大佐がここにいるって聞いてすっとんできたんだよ」
『国家錬金術師予算があるだろうが。まさか、銀時計まで盗まれたというのではないだろうな?』
ぶんぶんと首を振り、銀時計をみせられた。ふう、と安心したのもつかの間。『”鋼の”この金額はいったい何だ!?』予想以上の金額に驚いた。軽く半年分以上の研究費に相当するのではないか?
「だ~から、困ってるんだって。国庫から下ろすのには手続きに時間かかるし。その点、大佐ならパパッと払えるだろ?ああ、もちろん借りるだけ、ちゃんと返すから」『しかしだな…』「ええ!?大佐には払えない金額だった?」『むっ』残念そうな最後の一言が神経に障る。
『見くびらないでほしいな。私は君ほど金銭管理は大雑把ではないぞっ』「さっすが大佐!頼りにして良かったぁ」
本当に嬉しそうに笑うので、後には引けなくなってしまった。次の査定に備えて、大口の買い付けを考えていたんだが…。
「なあ、大佐。無理なら、そう言ってくれ。他の方法考えるから」『!』
いかん。つい計算で固まってしまったようだ。子供に心配されるなど、この私がッ。
『安心したまえ!エドワード・エルリック宛の請求書、たしかにこのロイ・マスタングが引き受ける』
「サンキュー大佐!あんた頼りになるよ」『当然だ』
「じゃあ、俺アル探しに行って来る」『ああ…ちょ、ちょっとまて”鋼の”!』
行ってしまった。ふう、とため息をついてしまう。何をやらかしたのか聞く暇も無かったじゃないか。
残されたのは請求書の束だけ。私がこれを燃やして知らん顔を決め込むとは考えないのか?
そこでハッとする。それは今までの彼の姿そのものではないか。頼ってほしいと願っていたのは自分。今はそれが叶ったばかりじゃないか。
ふいに可笑しくなって吹き出してしまった。窓の外を見れば青い空が広がっている。
『なんだ。今日は星空がみられるんじゃないか。ついでにレストランでも予約しておくか』
素直な笑顔を思い浮かべながら、ダイヤルをまわす自分の心も澄み渡るように和んでいくのを感じていた。
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2010-07-11 04:54
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