【ミリメシ】ナチスドイツ軍戦闘糧食【レーション】

「飯のまずい軍隊は負ける」という法則があるが、これは古今東西、遥か昔から世界の共通点であるらしい。
第二次大戦に関わらず、世界各国はこれまでの戦争の中で数々の戦闘糧食を生み出してきた。人間、美味いものを食えばやる気も出るし、まずいものを食わされれば、戦争など知ったことかとなる。第二次大戦の負け組である日本は、補給線を軽視しすぎるあまり、大量の餓死者を出し自滅したが、世界の裏側ではドイツ軍はせめてまともな食い物くらいは兵隊に配ろうと頑張っていた。ここではドイツ軍で支給された、基本的な戦闘糧食を説明しよう。

●左上:M31水筒。スチール製の水筒にフェルト地のカバーをかけ、雑音が鳴らないように工夫していた。容量0.8リットル。酷暑のアフリカ戦では一つの水筒だけでは戦闘時にすぐに空になってしまうため、複数の水筒を持ち歩く者もいた。「スープストック」という粉末状のスープが支給され、水に溶いてスープを作ることができた。

●左下:M31メスキット飯盒。蓋を取り外して携行できる飯盒。蓋は火にかけてフライパンになる。この中にフォークとスプーン、バター缶などを入れておく。

●中央上:粉末カッフィー(コーヒー)。ドイツ国内にコーヒー園は存在しないため、コーヒーの入手は基本的に占領地や数少ない外国からの輸送船に頼っていた。コーヒーは兵士にとって大変に人気で、リラックス効果もあり、任務の前には必ず支給されていた。やがてドイツ国内でもコーヒーが不足し始めるようになると、大豆からなるエアザッサ(代用)コーヒーが作られ、終戦の日まで兵士に支給された。

●中央:ショカコーラ・チョコレート。高カロリー、高糖分、味よしの人気物。アーモンドが入ったものや、バターをより多く加えて超高カロリーの非常食化したバージョンなど、様々な亜種が存在する。戦局が悪化するにつれ砂糖が手に入らなくなったため、後期生産分はハチミツなどの甘味料で代用品が作られた。連合軍の兵士たちにも人気の品で、倒したドイツ兵の死体を漁っては、ショカコーラを手に入れていたそうだ。ちなみに今でも販売されている。

●右上:ポテトマッシュ&ヴルスト(ソーセージ)。ドイツといえば、じゃがいも。ナチスドイツは戦時を見越して大量にじゃがいもを生産していた為、とにかくじゃがいもだけは豊富にあった。時間のない場合や戦闘中などは、単にゆでて食べるが、余裕のある後方地域では炊事長お手製の凝ったマッシュドポテトやフライドポテトなどが披露された。付け合わせでソーセージやイワシ、牛缶などが付くこともあり、兵士の食卓に彩を与えていた。勿論、栄養の面からみても優秀で、ドイツ軍が飢えなかった要因となった。

●右下:ブロート。黒パン。ライ麦から作られた堅パンで、噛み応えがあり、兵士に満腹感をもたらした。が、味はイマイチで、連合軍の兵士は占領したドイツ軍の補給倉庫からブロートを見つけても、無視していたという。評判は悪いが、栄養価は高い。アフリカ戦では暑さで腐るためバターは支給されなかったが、通常時はバターやチーズ、マーガリンが一緒に配給され、ブロートに塗りたくって食べた。

この他にも、長期保存が効き、大量生産できるキャベツの塩漬け・ザワークラウトや、ノルウェーから輸送されていたイワシの油漬け、イタリアから大量に押収したパスタ、フランス製のワインなどがメニューに乗った。ドイツ軍の戦闘糧食は非常に満足度が高く、一般の兵でも楽しんで食事をすることができた。週末には酒も出されるなど、超大国アメリカを除けば、食事は十分に充実していたと言える。
また占領下のカフェやレストランを使用する際には、必ず代金を支払うことが義務付けられており、粗暴に食事だけして代金を支払わないという事は許されなかった。ノルマンディの防壁を警備していた中隊などは、毎朝注文する牛乳のために、中隊で資金を積み立てていたという。

ドイツ軍で飢えが発生したのは、包囲されたスターリングラードやレリングラード、末期戦の東プロイセンなどの一部の地域だけで、ほとんどの戦線では食料の欠乏は少なかった。これはドイツ軍の占領地が広く、各地から軍隊が自給自足で糧食を補給できたという点も大きいが、補給部が兵隊を飢えさせないために、相当の労力を払っていた点が大きく作用していたと考えられている。補給線軽視で戦死者より餓死者のほうが多いという日本軍とは、根本的に補給の概念が違うのだろう。「歩ける者は30日、座り込む者は20日、寝たきりの者は10日、目を開いたままの者は3日の命」と言われた日本軍の糧秣事情からすると、うらやましい限りである。

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2024-04-26 20:32

 Bohemian


Comments (8)

Bohemian 2024-04-29 01:02

敗戦直前でも、ドイツ軍では餓死者は出てませんでしたからね。軍、民間ともに。軍、民間ともにボロボロだった日本軍とは大差がありますねえ。ドイツのチューブ入りチーズはうまかったそうですよ。連合軍の兵士がこぞって横取りするくらいに。

レイン 2024-04-28 23:04

軍から民間に行くのは色々知ってましたが、アルファ米もだとは・・・ ドイツ軍は敗戦ムードでやつれてはいたけど、鹵獲で喰いつなぐか餓死した日本と比べると痩せてはいなかったですね 今はフランスのミリメシが有名ですが、当時のドイツのミリメシは世界一ぃぃーーー!ですね

Bohemian 2024-04-27 10:37

バルジ辺りから、ドイツ軍も補給が滞ってきましたからね。特に燃料が。それでも食料だけは何とかしていた点は評価できますね。

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安埜雲 2024-04-27 06:55

後半は後方の庶民よりも良い食事だったそうですが、恵まれたアメリカ軍には不味く、バルジの戦いで自軍の軍食を「美味い」と言って、こんな飯を美味いと言うのは俺たちに化けたドイツ野郎だと勘違いされて投獄された者がいたとか。それでもウィンナーだけはアメリカ軍にも美味いと評判だったそうです。

Bohemian 2024-04-26 22:18

日本軍は米に関しては相当苦労してたみたいですね。台湾で日本人に合う新米を20年かけて改良したりしてますし。

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