隣の席のヴィランちゃん 第五話『パシリ』
「このパン、おいしいけど食べにくいんだね…一つ勉強になった…」
そう言いながらも火野キセラはフルーツサンドから溢れて袖についた生クリームを楽しそうになめとっていた。
ボクは詳しく無いが、フルーツサンドはオレンジやイチゴを丸ごと挟んでサンドイッチで、その断面の綺麗さからいわゆる「SNS映え」で流行った食べ物だ。
正直うちの学校では流行ってはいるが味はおいしくないと不評で大半の女性とは写真を撮って半分食べたら捨ててしまう代物。
それを彼女はスマホを取り出そうともせず頬張って、こぼしてはそれ自体を楽しむかの様に嬉しそうになめとっている。
まるで、蛇口からジュースが出てくる夢が実現した時の子供の様だ。
おそらくスマホ自体持っていないのだろう。SNS映えなんかも知らず、周りがしていた事を見よう見まねで真似して、その全てが新鮮で…楽しいのだ。
こんな愛らしい顔をし、純粋な心を持っているが、学校一つ消し炭にできる火の悪魔を左目に宿している。
生まれながらのヴィランというその宿命が彼女を人間関係から遠ざけ、孤立させている。
それさえ無ければ…彼女も普通の女子高校生らしい事がしたいのか…。
「ねぇ、変態さん」
※
「買ってもらって悪いけど…もう一つの方食べてくれる?」
…もう一つの方?
彼女が目線で膝に置いてあるもう一つのフルーツサンドを指し示す。
うちの学食のフルーツサンドは2個入り。組み合わせのバリエーションはあるがキセラが食べているのはイチゴで、もう片方がオレンジのサンドだ。
「変態にジーッと食べる姿見られてるのも気持ち悪いし、食べきれないし、お金も払えないのに奢ってもらって一人で食べるのも申し訳ないから…」
あらあらあらあらあらあらあらあらあらあら。
前半はキツイこと言ってたのにすーーーーーーぐ本音が出てきちゃった『申し訳ないから』って!
ボクを遠ざける為に嫌なことしようとパシリをさせるような真似をして、いざボクが喜び勇んでパシリをしてきた『申し訳ないから』ですって!
やっぱり悪魔に取り憑かれてようがその人の本質は変わりませんねぇ。
『左目に悪魔を宿している。だが左目以外は天使である』
それが彼女、火野キセラということだ。
「ああもう気持ち悪くニヤつくな!次その顔したら燃やすからな!ホントに!」
さて、そんな気がないとしても、そろそろおちょくるのはやめておこう。
『誰かと一緒に昼食を食べる』。これもきっとヴィランである彼女が憧れた『普通の女子高生らしい事』の一つなのだから。
そう言いながらも火野キセラはフルーツサンドから溢れて袖についた生クリームを楽しそうになめとっていた。
ボクは詳しく無いが、フルーツサンドはオレンジやイチゴを丸ごと挟んでサンドイッチで、その断面の綺麗さからいわゆる「SNS映え」で流行った食べ物だ。
正直うちの学校では流行ってはいるが味はおいしくないと不評で大半の女性とは写真を撮って半分食べたら捨ててしまう代物。
それを彼女はスマホを取り出そうともせず頬張って、こぼしてはそれ自体を楽しむかの様に嬉しそうになめとっている。
まるで、蛇口からジュースが出てくる夢が実現した時の子供の様だ。
おそらくスマホ自体持っていないのだろう。SNS映えなんかも知らず、周りがしていた事を見よう見まねで真似して、その全てが新鮮で…楽しいのだ。
こんな愛らしい顔をし、純粋な心を持っているが、学校一つ消し炭にできる火の悪魔を左目に宿している。
生まれながらのヴィランというその宿命が彼女を人間関係から遠ざけ、孤立させている。
それさえ無ければ…彼女も普通の女子高校生らしい事がしたいのか…。
「ねぇ、変態さん」
※
「買ってもらって悪いけど…もう一つの方食べてくれる?」
…もう一つの方?
彼女が目線で膝に置いてあるもう一つのフルーツサンドを指し示す。
うちの学食のフルーツサンドは2個入り。組み合わせのバリエーションはあるがキセラが食べているのはイチゴで、もう片方がオレンジのサンドだ。
「変態にジーッと食べる姿見られてるのも気持ち悪いし、食べきれないし、お金も払えないのに奢ってもらって一人で食べるのも申し訳ないから…」
あらあらあらあらあらあらあらあらあらあら。
前半はキツイこと言ってたのにすーーーーーーぐ本音が出てきちゃった『申し訳ないから』って!
ボクを遠ざける為に嫌なことしようとパシリをさせるような真似をして、いざボクが喜び勇んでパシリをしてきた『申し訳ないから』ですって!
やっぱり悪魔に取り憑かれてようがその人の本質は変わりませんねぇ。
『左目に悪魔を宿している。だが左目以外は天使である』
それが彼女、火野キセラということだ。
「ああもう気持ち悪くニヤつくな!次その顔したら燃やすからな!ホントに!」
さて、そんな気がないとしても、そろそろおちょくるのはやめておこう。
『誰かと一緒に昼食を食べる』。これもきっとヴィランである彼女が憧れた『普通の女子高生らしい事』の一つなのだから。
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2024-05-17 20:00
Comments (31)
左 目 以 外 は 天 使 で で き て い る
その服にこぼれ落ちたクリームを舌で舐め取りたい… あ、お巡りさん、私です
View Repliesかわええのう…
天使?
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