いつかきっと抱きしめられたら

「私、■■のこと好きだよ」
 私と友達になってくれてありがとうと、まるでこの先己の身になにが起きるのかを知っているかのように彼女はそう言った。やめてよ、と。いきなりなによ恥ずかしいじゃない、と。愚かにも素直になれずそう返してしまったことを、私は後悔している。私も好きというその一言がどうにも言えなくて、言えたところでなにかが変わるわけでもないのだが、しかし言えなかったという現実は私を責め立てた。
 彼女が学校を無断で休んだのだと先生から聞いたとき、妙に胸がざわついた。彼女の家に行ってみて、そして──真っ赤に彩られた日本家屋の中で漸く見つけた貴女はひどく小さくなっていた。
 欠けているのではなく奪われているから上手くはいかなかったけれど、でも、不完全ながらも貴女は私の腕の中にいる。喉がひゅうひゅうと音を立てるばかりで貴女の声を聞くことは叶わないが、ひとまずはこれでいいと、そう思うことにした。
 待っていて。
 いつかきっと、必ず、私が貴女の身体を奪った化物を見つけ出して退治してみせるから。そうして取り返して、貴女の全部がちゃんと揃ったら、今度こそ完璧にやってみせる。

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2024-07-20 21:44

 籾殻付玄米


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