商細蕊のお誕生日会の翌朝(SS付き)
商細蕊のお誕生日を祝う宴席は深夜にまでおよび、程凤台は商細蕊と共に水雲楼へと帰り、泊まる事とした。
ーーー翌朝。
部屋の中にも外の明るさが入り込み、目を覚ました程凤台。
昨晩は車から降りて、商細蕊を抱えながら部屋に入ったところまでは覚えているのだが、どうやって眠りについたのかはまるで記憶がない。
喉がカラカラに乾いている。身体も重い。
座卓の上にある土瓶から湯呑に水を注ぎ飲み干す。
隣に寝ていたはずの商細蕊の姿はない。
ぐしゃぐしゃになった寝具を畳んで立ち上がろうとした瞬間、ぐらっと頭が揺れる。「っつ…」自分が思っている動きに身体が付いて行っていない。
(…あー…酒が抜けてねぇ…)
翌日にまで酒が残るような飲み方は普段しないのだが、どういうわけが調子に乗ってしまった。
もう一杯水を飲んでから、箪笥の引き出しから置きっぱなしにしている石鹸や髭剃り道具を出して顔を洗いに行く。
いつもならこの時間は座員達が稽古をしている声がしているはずなのだが、今朝は人の気配はするものの稽古はしていないようだ。(昨晩のどんちゃん騒ぎを考えれば当然か…)
ハッキリしない意識と少しの頭痛を感じながら身支度を整えていく。
夏場に昨日も着ていたシャツをもう一度着直すなんて、嫌な事だ。
ケースに入った石鹸を見て、替えのシャツも一緒に置いておいた方がいいのか、と真面目に思ってしまう。
支度をしている間に、程凤台は商細蕊か小来が様子を見に来るかと思っていたが、その気配はない。
上着を脇に抱え、外に出で太陽の光を浴びる。
まだ気温はさほど上がってきてはいないが、眩しさが今日も暑くなると感じさせる。
中庭の長机には朝食用に土瓶と湯呑がいくつか置かれており、食事をした形跡が残っている。
程凤台は長椅子にまたがり腰掛ける。
片手で額をおさえながら「しばらく安静にしていれば、この気持ち悪さは取れてくれるはず…!」と大きく息を吐きながら自ら自分に願う。
傍に誰かが近寄ってきて、机の上に大皿が置かれる。
切ったばかりの瑞々しいスイカが目の前にたくさん。
とても大玉のスイカのようで、一切れが顔を覆う程大きい。
もう一つ置かれた大皿に入ったスイカは、座員達が我先にと手を伸ばし、皿が空になったと思ったら、入れ替わるように緑の皮が返却されていく。
「二爷、二日酔いですか?
西瓜を食べてください。治りますよ。」
右手にスイカを持ちながら商細蕊が声をかけてきた。
昨晩、同じくらいに浴びるように酒を飲んで泥酔していた(俺が抱えて運んだんだから)はずなのに、何も無かったようにピンピンしている。
(キミはどうしてそんなに元気なんだ…)
「はい、食べて!」
皿から取り上げたスイカを程凤台の顔の前に差し出す。
そのままにしていたら口に突っ込まれそうだと思い、渋々受け取りひとくち齧る。
薄甘い味が口全体に広がり、ゴクリと喉が鳴りそうなほど水分が多い。
果汁が机に滴り落ちる。
「美味いですか?」
商細蕊の右手のスイカはもう半分以上無くなっていて、左手には新たなスイカが用意されている。
「うん、上手いよ、生き返る」
「それは良かった!」
スイカを半分ほど食べたところで、気分が悪かったのが本当に治ってきた。
冷えてもおらず、常温のままのスイカだが、最近食べた中で一番おいしく感じた。
「それはそうと朝からスイカだなんて、元から用意してあったのか?」
「えっ⁉ そそそうですよ。昨日…昨日、プレゼントとして貰ったんです!」
「スイカを?変だな、スイカなんて普通贈らないだろ??」
商細蕊の方を見ると、明らかに何かを隠していて怪しい。
「~~~!
もぅ、早く食べて帰って!
二奶奶が待ってるでしょ!」
ぷいっと、奥へ歩いて行ってしまった。
(なんだ?ただ聞いただけなのに)
一切れ食べ終わる頃には、気分も良くなり意識もシャンとしてきた。
そうこうしていると、老葛が程凤台を迎えに入って来た。
座員達と一緒にスイカを食べていた形跡を見て、どんどん水雲楼に旦那様が馴染んでいくことに、老葛は戸惑いを隠せない。
見て見ぬふりはできても、奥様に全てを隠すことがこの先できるのだろうかと不安が募る。
「さて、迎えも来たことだし帰るよ!」
「二爷、また来てくださいね!」「待ってます!」
笑顔で見送られる。
車に乗り際、大聖に呼び止められ、スイカの真実を知る。
「あのスイカは貰ったんじゃないぜ、班主に言われてさっき買ってきたのさ」
===========
お読みいただきありがとうございましたーー!!
ーーー翌朝。
部屋の中にも外の明るさが入り込み、目を覚ました程凤台。
昨晩は車から降りて、商細蕊を抱えながら部屋に入ったところまでは覚えているのだが、どうやって眠りについたのかはまるで記憶がない。
喉がカラカラに乾いている。身体も重い。
座卓の上にある土瓶から湯呑に水を注ぎ飲み干す。
隣に寝ていたはずの商細蕊の姿はない。
ぐしゃぐしゃになった寝具を畳んで立ち上がろうとした瞬間、ぐらっと頭が揺れる。「っつ…」自分が思っている動きに身体が付いて行っていない。
(…あー…酒が抜けてねぇ…)
翌日にまで酒が残るような飲み方は普段しないのだが、どういうわけが調子に乗ってしまった。
もう一杯水を飲んでから、箪笥の引き出しから置きっぱなしにしている石鹸や髭剃り道具を出して顔を洗いに行く。
いつもならこの時間は座員達が稽古をしている声がしているはずなのだが、今朝は人の気配はするものの稽古はしていないようだ。(昨晩のどんちゃん騒ぎを考えれば当然か…)
ハッキリしない意識と少しの頭痛を感じながら身支度を整えていく。
夏場に昨日も着ていたシャツをもう一度着直すなんて、嫌な事だ。
ケースに入った石鹸を見て、替えのシャツも一緒に置いておいた方がいいのか、と真面目に思ってしまう。
支度をしている間に、程凤台は商細蕊か小来が様子を見に来るかと思っていたが、その気配はない。
上着を脇に抱え、外に出で太陽の光を浴びる。
まだ気温はさほど上がってきてはいないが、眩しさが今日も暑くなると感じさせる。
中庭の長机には朝食用に土瓶と湯呑がいくつか置かれており、食事をした形跡が残っている。
程凤台は長椅子にまたがり腰掛ける。
片手で額をおさえながら「しばらく安静にしていれば、この気持ち悪さは取れてくれるはず…!」と大きく息を吐きながら自ら自分に願う。
傍に誰かが近寄ってきて、机の上に大皿が置かれる。
切ったばかりの瑞々しいスイカが目の前にたくさん。
とても大玉のスイカのようで、一切れが顔を覆う程大きい。
もう一つ置かれた大皿に入ったスイカは、座員達が我先にと手を伸ばし、皿が空になったと思ったら、入れ替わるように緑の皮が返却されていく。
「二爷、二日酔いですか?
西瓜を食べてください。治りますよ。」
右手にスイカを持ちながら商細蕊が声をかけてきた。
昨晩、同じくらいに浴びるように酒を飲んで泥酔していた(俺が抱えて運んだんだから)はずなのに、何も無かったようにピンピンしている。
(キミはどうしてそんなに元気なんだ…)
「はい、食べて!」
皿から取り上げたスイカを程凤台の顔の前に差し出す。
そのままにしていたら口に突っ込まれそうだと思い、渋々受け取りひとくち齧る。
薄甘い味が口全体に広がり、ゴクリと喉が鳴りそうなほど水分が多い。
果汁が机に滴り落ちる。
「美味いですか?」
商細蕊の右手のスイカはもう半分以上無くなっていて、左手には新たなスイカが用意されている。
「うん、上手いよ、生き返る」
「それは良かった!」
スイカを半分ほど食べたところで、気分が悪かったのが本当に治ってきた。
冷えてもおらず、常温のままのスイカだが、最近食べた中で一番おいしく感じた。
「それはそうと朝からスイカだなんて、元から用意してあったのか?」
「えっ⁉ そそそうですよ。昨日…昨日、プレゼントとして貰ったんです!」
「スイカを?変だな、スイカなんて普通贈らないだろ??」
商細蕊の方を見ると、明らかに何かを隠していて怪しい。
「~~~!
もぅ、早く食べて帰って!
二奶奶が待ってるでしょ!」
ぷいっと、奥へ歩いて行ってしまった。
(なんだ?ただ聞いただけなのに)
一切れ食べ終わる頃には、気分も良くなり意識もシャンとしてきた。
そうこうしていると、老葛が程凤台を迎えに入って来た。
座員達と一緒にスイカを食べていた形跡を見て、どんどん水雲楼に旦那様が馴染んでいくことに、老葛は戸惑いを隠せない。
見て見ぬふりはできても、奥様に全てを隠すことがこの先できるのだろうかと不安が募る。
「さて、迎えも来たことだし帰るよ!」
「二爷、また来てくださいね!」「待ってます!」
笑顔で見送られる。
車に乗り際、大聖に呼び止められ、スイカの真実を知る。
「あのスイカは貰ったんじゃないぜ、班主に言われてさっき買ってきたのさ」
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お読みいただきありがとうございましたーー!!
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2024-08-09 18:35
Comments (3)
ハが抜けてしまったーーごめんなさい🤣
ハギワラさんーー とても素敵なSSでした😂 二日酔いの二爷の為にわざわざ西瓜買ってきたのーー本当に商細蕊の二爷への愛情は深いですね。ニ爷はきっと帰る車の中で幸せを噛みしめてると思う ギワラさんらしい美しくて優しい幸せの溢れるお話でした。 ありがとうございます😊
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