古明地心療相談クリニック 6
あーーこれはいけませんね。
「それであちこち行っても症状が良くならず心の問題かとここに来たと。」
「・・はい。今も、凄く、気持ち悪くて・・っ!!」
「単刀直入に言って廃墟に足を踏み入れましたね?貴方に憑いて来ている霊がいます。気持ち悪いのは病気だからではありません。お寺か神社に行って下さい。藍さん。」
私に通す前にそう言って欲しい。
「近場で一番有効なお寺か神社に。」
「受付はどうする?」
「私がやります。」
「せ、先生!?」
「いいから行って下さい。」
2人を見送ってから。手書きの用紙を台に貼り付けて入口に、と。
「まあ藍さんの方が驚かれるでしょうが。」
共に極力妖力を抑え込んでいるとは言え純粋に妖怪ですからね。ましてや藍さんは白面金毛九尾の狐です。
「まあ。あの人は上手くやるでしょう。」
それにあの霊は私達相手に気付かなかったレベルの霊です。大事には至らない筈<はず>。
「それにしてもこういうパターンもありますか。除霊はできませんからね。私に怯えて離れたとしても他の誰かのところに行ってしまいますし。藍さんなら可能なんでしょうが。あまりあれもこれもと受け付けるのもどうかと思いますしね。」
おや。ですね。
「受付の看護師不在ですのでー。医師と対面になりますがー。それでもよろしければどうぞー。」
近付いて来た心にそう言うと入口が開く。
「えっ!?子供!?ピンク!?」
「成人してますよ。身分証見ます?」
偽造ですけど。
「髪色はまあ。」
生まれつきです。
「あっ、いえ・・すみません。」
「良いですよ。では診療室へ。」
ふむ。
「ご家族でいらっしゃいます?」
「はい。その、お恥ずかしい話かとも思うんですが、子育てに・・疲れ切ってしまって。」
「初めてのお子さんですか?まだ1才にもなっていないくらい?」
「・・はい。・・もう・・ほんと・・イヤでイヤで。」
「お母さんはかなり衰弱してますね。夜泣きが酷いですか?」
「・・こんなに・・ウルサイなんて聞いてない・・っ!」
「お父さんの方は?」
「言っちゃあ、何なんですが、仕事もありますし、その、付き合いとか。リモートじゃできない作業もあるしで。」
あーー夫婦間の溝がヤーバいですね。お母さんの方はいつ決壊してもおかしくない。
「するとお母さんの方はお子さんから離れられる時間が全くない。それは大問題ですね。1日でも預けられる親戚は?どちらかの御両親とか。」
「他県なんで、無理ですね。来てもらうにしても、入院とか、ありますし。」
「・・もうホントイヤ!」
・・・・。ふむ。
「何でもできるって思ってません?親なんだからできて当たり前とか。それ間違ってますからね?」
「え?」
「・・は?」
「だってそうでしょう?最初からできる人なんていやしません。誰だってハイハイからでしょう?お2人は親レベル1なんです。大人レベルがいくつあっても関係ありません。これから親経験値を積んで親レベルを上げて下さい。」
「親レベル。」
「・・経験・・値。」
「はい。」
「その子。私を見てもぐずりませんし、何なら手を伸ばしてくるくらいです。」
まだ赤子だからでしょう。私が人間ではないと本能で解っている。そういう心です。
「好奇心旺盛ですね。」
私はピンクの髪を摘まんでみせますが、この子の心はサードアイに向いている。
「夜泣きが酷いなら部屋を分けてみては?お2人で親なんです。お父さんが面倒を見る日と分けてみて下さい。事前に対応表を作って。耳栓やアイマスクもオススメします。何せ赤ちゃんは泣くのが仕事ですから。親の仕事は勿論子育てですが、ならどちらも仕事。仕事上の付き合いとして、距離を置く時間を作って下さい。それでも気になってしまうのは親として普通の事ですから、この時間は忘れなきゃいけないのに、とか考えて自分を責めないように。人は誰しも得意不得意長所短所があります。頑張る事は良い事ですが、頑張り過ぎる事は良くありません。イヤだとかウルサイだとか思っちゃっても良いんです。命と命が向き合うという事はそういう事です。勿論そこで終わってはいけませんが。その子はお2人を見上げて笑ってるじゃないですか。」
「先生は、お子さん、いらっしゃるんですか?」
「いいえ。」
「・・けど・・っ!・・うぅ・・っ!」
「大人だからって、親だからって、泣く事は我慢せずに泣いて下さい。泣きたいと思った心は大切にしてあげて下さい。」
「・・う・・うぅぅ・・っっ!!!!」
「お母さんが泣いていてもその子はつられて泣かず手を伸ばしています。心配しているんですよ。それは大切に育てられている証拠だと思いますよ?それは親として立派な事だと思いますよ?困ったらまた来て下さい。私は話を聞くのが仕事ですから。」
・・。
・・・・。
「ぐでーーん。疲れましたーー。」
「私がいない間にそんな事があったんだな。」
診療室のイスに背中を預けて天井を見つめる。
「そっちはどうでしたーー?」
こいしは元気でやってるでしょうか?私がいなくても変わらない平常運転だとは思いますが。
「特に問題にはならなかったな。私の気配に感じるところがあっても、彼の方が優先事項だ。預けられればそっちを優先する。」
お空やお燐もいつも通りでしょうか?ちゃんとお仕事してくれていますかね?
「そうですかーーそうですねーー。そう言えば時間の進み具合って同じなんですかーー?」
「そうだな。そんなに変わらない筈だ。」
「そろそろ帰りませんーー?」
「助っ人が来る。」
上体を起こす。
「何で?」
「誰が良い?」
え?まだ酔っ払ってるんですか?
「酒は付き物なのが幻想郷だからな。」
帰して?
「まだ無理だな。」
ちょっと様子を見に。
「主不在でも回ってるみたいだぞってそっちも目的の1つなんですか!?」
家<うち>には家<うち>の方針がってダメだこの九尾心が聞く耳持ってねえ!!
「それであちこち行っても症状が良くならず心の問題かとここに来たと。」
「・・はい。今も、凄く、気持ち悪くて・・っ!!」
「単刀直入に言って廃墟に足を踏み入れましたね?貴方に憑いて来ている霊がいます。気持ち悪いのは病気だからではありません。お寺か神社に行って下さい。藍さん。」
私に通す前にそう言って欲しい。
「近場で一番有効なお寺か神社に。」
「受付はどうする?」
「私がやります。」
「せ、先生!?」
「いいから行って下さい。」
2人を見送ってから。手書きの用紙を台に貼り付けて入口に、と。
「まあ藍さんの方が驚かれるでしょうが。」
共に極力妖力を抑え込んでいるとは言え純粋に妖怪ですからね。ましてや藍さんは白面金毛九尾の狐です。
「まあ。あの人は上手くやるでしょう。」
それにあの霊は私達相手に気付かなかったレベルの霊です。大事には至らない筈<はず>。
「それにしてもこういうパターンもありますか。除霊はできませんからね。私に怯えて離れたとしても他の誰かのところに行ってしまいますし。藍さんなら可能なんでしょうが。あまりあれもこれもと受け付けるのもどうかと思いますしね。」
おや。ですね。
「受付の看護師不在ですのでー。医師と対面になりますがー。それでもよろしければどうぞー。」
近付いて来た心にそう言うと入口が開く。
「えっ!?子供!?ピンク!?」
「成人してますよ。身分証見ます?」
偽造ですけど。
「髪色はまあ。」
生まれつきです。
「あっ、いえ・・すみません。」
「良いですよ。では診療室へ。」
ふむ。
「ご家族でいらっしゃいます?」
「はい。その、お恥ずかしい話かとも思うんですが、子育てに・・疲れ切ってしまって。」
「初めてのお子さんですか?まだ1才にもなっていないくらい?」
「・・はい。・・もう・・ほんと・・イヤでイヤで。」
「お母さんはかなり衰弱してますね。夜泣きが酷いですか?」
「・・こんなに・・ウルサイなんて聞いてない・・っ!」
「お父さんの方は?」
「言っちゃあ、何なんですが、仕事もありますし、その、付き合いとか。リモートじゃできない作業もあるしで。」
あーー夫婦間の溝がヤーバいですね。お母さんの方はいつ決壊してもおかしくない。
「するとお母さんの方はお子さんから離れられる時間が全くない。それは大問題ですね。1日でも預けられる親戚は?どちらかの御両親とか。」
「他県なんで、無理ですね。来てもらうにしても、入院とか、ありますし。」
「・・もうホントイヤ!」
・・・・。ふむ。
「何でもできるって思ってません?親なんだからできて当たり前とか。それ間違ってますからね?」
「え?」
「・・は?」
「だってそうでしょう?最初からできる人なんていやしません。誰だってハイハイからでしょう?お2人は親レベル1なんです。大人レベルがいくつあっても関係ありません。これから親経験値を積んで親レベルを上げて下さい。」
「親レベル。」
「・・経験・・値。」
「はい。」
「その子。私を見てもぐずりませんし、何なら手を伸ばしてくるくらいです。」
まだ赤子だからでしょう。私が人間ではないと本能で解っている。そういう心です。
「好奇心旺盛ですね。」
私はピンクの髪を摘まんでみせますが、この子の心はサードアイに向いている。
「夜泣きが酷いなら部屋を分けてみては?お2人で親なんです。お父さんが面倒を見る日と分けてみて下さい。事前に対応表を作って。耳栓やアイマスクもオススメします。何せ赤ちゃんは泣くのが仕事ですから。親の仕事は勿論子育てですが、ならどちらも仕事。仕事上の付き合いとして、距離を置く時間を作って下さい。それでも気になってしまうのは親として普通の事ですから、この時間は忘れなきゃいけないのに、とか考えて自分を責めないように。人は誰しも得意不得意長所短所があります。頑張る事は良い事ですが、頑張り過ぎる事は良くありません。イヤだとかウルサイだとか思っちゃっても良いんです。命と命が向き合うという事はそういう事です。勿論そこで終わってはいけませんが。その子はお2人を見上げて笑ってるじゃないですか。」
「先生は、お子さん、いらっしゃるんですか?」
「いいえ。」
「・・けど・・っ!・・うぅ・・っ!」
「大人だからって、親だからって、泣く事は我慢せずに泣いて下さい。泣きたいと思った心は大切にしてあげて下さい。」
「・・う・・うぅぅ・・っっ!!!!」
「お母さんが泣いていてもその子はつられて泣かず手を伸ばしています。心配しているんですよ。それは大切に育てられている証拠だと思いますよ?それは親として立派な事だと思いますよ?困ったらまた来て下さい。私は話を聞くのが仕事ですから。」
・・。
・・・・。
「ぐでーーん。疲れましたーー。」
「私がいない間にそんな事があったんだな。」
診療室のイスに背中を預けて天井を見つめる。
「そっちはどうでしたーー?」
こいしは元気でやってるでしょうか?私がいなくても変わらない平常運転だとは思いますが。
「特に問題にはならなかったな。私の気配に感じるところがあっても、彼の方が優先事項だ。預けられればそっちを優先する。」
お空やお燐もいつも通りでしょうか?ちゃんとお仕事してくれていますかね?
「そうですかーーそうですねーー。そう言えば時間の進み具合って同じなんですかーー?」
「そうだな。そんなに変わらない筈だ。」
「そろそろ帰りませんーー?」
「助っ人が来る。」
上体を起こす。
「何で?」
「誰が良い?」
え?まだ酔っ払ってるんですか?
「酒は付き物なのが幻想郷だからな。」
帰して?
「まだ無理だな。」
ちょっと様子を見に。
「主不在でも回ってるみたいだぞってそっちも目的の1つなんですか!?」
家<うち>には家<うち>の方針がってダメだこの九尾心が聞く耳持ってねえ!!
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2024-08-17 14:16
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