真夜中のお茶会

 「まあ、お茶でも飲みなよ」
 真夜中、白猫に誘われて、部屋の外へ出て行った。
 外に出るのは久しぶりだった。
 猫の後に付いていくと、満天の星空の下に、テーブルと椅子、お茶が用意されていて、お茶を勧めてくれた。
 「美味しいかい?」
 私はこくりと頷いた。
 煌めく星空の下で、飲む紅茶はとても美味しかった。
 白猫は私がお茶を飲むのを嬉しそうに見守っていたが不意に、
 「優那は、お茶を飲み終えたら、どうするの?」
 と聞いてきた。
 (どうしたらいいんだろう?)
 お茶をすすりながら私は思った。
 些細なことがいっぱいあって、いつしか何も関わりたくなくなって、引きこもってしまった。
 どうすることも出来なかった。どうしようもなかった。
 もう、いいよね…。
 「いいかい、優那、お茶を飲み終わったら、カップを洗う。お茶を飲みたくなったら、カップにお茶を注ぐ。それだけだよ、簡単だろ、君にも出来るよ」
 白猫は微笑みながら私に言った。
 「優那、もうお帰り、またね」
 最後に白猫は、一言付け加えて、私の前から消え失せて行った。
 
 虚ろな状態から、意識を回復していった。
 猫の夢を見ていた。
 昔飼っていて、老衰で死んだ白猫、幼い時仲良く遊んだ猫だった。
 泣き虫だった私にいつも寄り添ってくれた一番の親友だった白猫のモモ。

 私は、少しづつこの世界と関わって来ている。モモから教わった教訓を胸に抱いて。
 もう一度モモと会えた時、ちゃんと答えられるように、私は生きていく。end 

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2024-08-22 05:01

 閏月晦


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