ナイスネイチャが頑張る話C+・07
今日も夜遅くまでのトレーニングをおえ、そろそろ暖かくなり始めた空気を感じながら、アタシは寮へ戻るため夜道を歩いていた。
「だいぶ体も追いついてきたね…」
アタシはなんとなく力拳を作ってみて我ながら鍛え上がっている体をチェックする。
南郷トレーナーの元トレーニングを初めてそれなりの月日があった。
当初は毎日が激痛であったが、南郷トレーナーのアフターフォローと練習に慣れてきたこともありだいぶ体の痛みは抑えることが出来てきた。
「順調だ、これなら6月のG1レースには出れるだろう、おそらく今のお前の実力に並ぶ選手はそうそういないはずだ」
今日もお前のために徹底的に鍛え上げてやる、が最近の口癖の彼はそういい。いつもなぜか不本意そうに肩を竦めるのだった。
「もう少し…もう少し…」
自分に言い聞かせるように何度も言ってきた言葉を今夜も繰り返す、もう少し上へ、もう少し先へ、私の目標のために立ち止まっては行けない。
常に上を、上を目指して、後ろを振り返らずにアタシはなんとかここまで日々を積み重ねて来た。
「…」
学園の一室を見つめる。
遠くに見えるトレーナー室が並ぶエリア、いつも見ていたトレーナー室のエリア。
そこには薄いカーテン越しに映るトレーナーさんの姿が見えた。
「…」
彼のもとに戻るのももう少し、もう少しの我慢なのだ。
トレーナーはカーテン越しで見えにくいが、テーブルに向かい何か書き仕事をしているようだった、
その表情までは伺えないが、アタシを移籍してからも普段通り仕事を当たり前だが彼はしていた。
とはいってもここはトレセン学園だ、意図的にあわなければほとんど合う機会はない。
結局一回もまともに話をする機会もなくここまで来てしまった。
「ちょっとぐらい会いに来てもいいじゃない…」
その背中を見てアタシは思わず呟く。
これだけ頑張ってるんだから少しはこの姿を見てもいいんじゃないか、そう思わずはいられないのである。
「まあ…見ててね」
次のG1で勝利して実力を見せればいいのだ。
そうすればトレーナーさんもアタシの努力を認めてくれ、またアタシ達は元の関係に戻れる、それでいい。
そのためにも頑張ろう、そう思いアタシは気合いを入れ直した。
「…?」
ふと、気づくとトレーナー室の人影が二人になっていた。
あれは…ウマ娘…?
アタシはその姿を見て固まった、あの子は…。
ーーーーーーーーーー
「トレーナーさん…この前はありがとうございました」
「いやいや、君の実力だよ、俺は何も」
「いえ、そんな事ないですよ、ご指導の賜物です」
「実力あるやつを探し出すのが上手いだけさ…ともあれ、改めておめでとう」
ボクは改めてトレーナーさんに感謝の気持ちを伝えにトレーナー室に来ていた。
トレーナーさんは深々と頭を下げた僕を慌てて止めにはいる、しかしこの感謝の気持ちだけは伝えたかった。
頭を上げ、僕は本題に入ることにした、ここに来たもう一つの目的…トレーナーになってくれないかとお願いをしにきた件だ。
「ボクのトレーナーはあの試合で引退をしました、いいトレーナーさんでした」
「そうなのか…あの人ももう年だもんな、引退かぁ…俺入りたての本当に一週間ぐらいだけど指導されたんだ」
「そうなんですね」
トレーナーには厳しいんだよなと笑うトレーナーを見て、そうなのか、と僕は少しだけ内心で驚いた。
ウマ娘にはそんな事を見せる人ではなかったからだ。
ただ、最後に有終の美を飾るのに協力できたようで非常に嬉しいことであった。
「それで…何回かお話ししてますが…僕のトレーナーになってくれませんか…?」
そう言い探るように様子を見る、トレーナーさんは少し天井を見上げた後、首を振り申し訳なさそうな声で断ってきた。
「悪いな…前は考えるといったが…ちょっと今はそんな気にやはりなれなくてな…」
そういうトレーナーの顔は何回か見ているが少し苦しそうで、どこか寂しそうに僕には見えた。
「ナイスネイチャさんの事ですか」
「…まあ、それもある」
心当たりがあるとしたら元担当のウマ娘のことしか思いつかない、指摘をすると渋々と言った感じでトレーナーさんは認めた。
この人がナイスネイチャさんのトレーナーである事は僕はもちろん知っている。
そして今はなぜかナイスネイチャさんは移籍に出されている。
この二人に何があったかはわからないが、どうも何か事情があるらしい。
ただあまり良くないことがあったことは確かなようだ。
「ちょっとな…ごめんな、今は色々考えたが…手伝いはするが、それ以上は出来ないなと思ってる…俺以外にも候補はあるんだろ?」
「はい、えっと…明日から南郷トレーナーさんというところへ行く予定です」
「そうか」
もちろん次のトレーナーを誰にするかというのはあらかじめ老トレーナーが手配をしてくれていた。
次のトレーナー名前を出すと、一瞬その名前を聞いた時にトレーナーさんは反応した。知り合いだろうか?
南郷トレーナー、中堅のベテラントレーナーで短期育成の技術は非常に一流と聞いている。
同時に鬼教官だとも聞いているが、今のトレーナーの教え子ということもあり腕は確かだと聞いている。
(もしトレーナーさんがOKだったらこっちにくる予定だったのだけどなぁ)
そう内心思うがトレーナーにはトレーナーの事情があるのだろう、仕方ない。
「また何回も僕はいいますよ…?いつでもいいですからね」
「ああ、じゃあ次は有名になったら誘ってくれ」
「大丈夫ですよ、嫌でも見るようになってもらいますから」
「はは、その時はトレーナーになっておけば良かったと悔しがってそうだな」
「その時は言ってくれればいいだけです、それにまたたまにはトレーニングつけてくださいね、LANEしますから」
「ああ、分かった」
まあ今は無理なのは仕方ない、でもいつかはなってもらおう。
僕はそう思い彼に微笑みかけた。
ーーーーーーーーーー
「…なんだ、トレーナーさん…新しい子いるんだ…」
窓の景色からは中の様子までは伺えず、会話も聞こえない。
しかしアタシにはとても楽しそうに見えた。
「契約しちゃったの…?ねえその子と…契約したの?」
「アタシはもういらないの…?」
そんなことはないと思いたい、しかし自然とそんな言葉がアタシから溢れて出てくる。
アタシは努力してるのに、アナタに認めて欲しくて頑張ってるのに。
アナタはそうなんだ、新しい子と契約しちゃうの?
あなたはそんな人だったの?
「見たくなかった…」
そんな景色は見たくなかった、そんなトレーナーさんは見たくなかった。
実際はどうなのか分からないのに、人を疑うアタシも見たくなかった。
そんなことを思いつつもトレーナー室から目が離せないアタシも見たくなかった。
「ねえ…トレーナーさん」
部屋の中では二人はまだ談笑をしていた。
声は聞こえないが二人は笑顔だった。
「トレーナーさん」
あなたは?アタシのことどう思ってるの?
気づくとシュヴァルグランはいなくなっていた、話し合いは終わったということだろうか。
アタシは何も言わず、再び机仕事に戻ったトレーナーさんを遠くから見つめ続けた。
「だいぶ体も追いついてきたね…」
アタシはなんとなく力拳を作ってみて我ながら鍛え上がっている体をチェックする。
南郷トレーナーの元トレーニングを初めてそれなりの月日があった。
当初は毎日が激痛であったが、南郷トレーナーのアフターフォローと練習に慣れてきたこともありだいぶ体の痛みは抑えることが出来てきた。
「順調だ、これなら6月のG1レースには出れるだろう、おそらく今のお前の実力に並ぶ選手はそうそういないはずだ」
今日もお前のために徹底的に鍛え上げてやる、が最近の口癖の彼はそういい。いつもなぜか不本意そうに肩を竦めるのだった。
「もう少し…もう少し…」
自分に言い聞かせるように何度も言ってきた言葉を今夜も繰り返す、もう少し上へ、もう少し先へ、私の目標のために立ち止まっては行けない。
常に上を、上を目指して、後ろを振り返らずにアタシはなんとかここまで日々を積み重ねて来た。
「…」
学園の一室を見つめる。
遠くに見えるトレーナー室が並ぶエリア、いつも見ていたトレーナー室のエリア。
そこには薄いカーテン越しに映るトレーナーさんの姿が見えた。
「…」
彼のもとに戻るのももう少し、もう少しの我慢なのだ。
トレーナーはカーテン越しで見えにくいが、テーブルに向かい何か書き仕事をしているようだった、
その表情までは伺えないが、アタシを移籍してからも普段通り仕事を当たり前だが彼はしていた。
とはいってもここはトレセン学園だ、意図的にあわなければほとんど合う機会はない。
結局一回もまともに話をする機会もなくここまで来てしまった。
「ちょっとぐらい会いに来てもいいじゃない…」
その背中を見てアタシは思わず呟く。
これだけ頑張ってるんだから少しはこの姿を見てもいいんじゃないか、そう思わずはいられないのである。
「まあ…見ててね」
次のG1で勝利して実力を見せればいいのだ。
そうすればトレーナーさんもアタシの努力を認めてくれ、またアタシ達は元の関係に戻れる、それでいい。
そのためにも頑張ろう、そう思いアタシは気合いを入れ直した。
「…?」
ふと、気づくとトレーナー室の人影が二人になっていた。
あれは…ウマ娘…?
アタシはその姿を見て固まった、あの子は…。
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「トレーナーさん…この前はありがとうございました」
「いやいや、君の実力だよ、俺は何も」
「いえ、そんな事ないですよ、ご指導の賜物です」
「実力あるやつを探し出すのが上手いだけさ…ともあれ、改めておめでとう」
ボクは改めてトレーナーさんに感謝の気持ちを伝えにトレーナー室に来ていた。
トレーナーさんは深々と頭を下げた僕を慌てて止めにはいる、しかしこの感謝の気持ちだけは伝えたかった。
頭を上げ、僕は本題に入ることにした、ここに来たもう一つの目的…トレーナーになってくれないかとお願いをしにきた件だ。
「ボクのトレーナーはあの試合で引退をしました、いいトレーナーさんでした」
「そうなのか…あの人ももう年だもんな、引退かぁ…俺入りたての本当に一週間ぐらいだけど指導されたんだ」
「そうなんですね」
トレーナーには厳しいんだよなと笑うトレーナーを見て、そうなのか、と僕は少しだけ内心で驚いた。
ウマ娘にはそんな事を見せる人ではなかったからだ。
ただ、最後に有終の美を飾るのに協力できたようで非常に嬉しいことであった。
「それで…何回かお話ししてますが…僕のトレーナーになってくれませんか…?」
そう言い探るように様子を見る、トレーナーさんは少し天井を見上げた後、首を振り申し訳なさそうな声で断ってきた。
「悪いな…前は考えるといったが…ちょっと今はそんな気にやはりなれなくてな…」
そういうトレーナーの顔は何回か見ているが少し苦しそうで、どこか寂しそうに僕には見えた。
「ナイスネイチャさんの事ですか」
「…まあ、それもある」
心当たりがあるとしたら元担当のウマ娘のことしか思いつかない、指摘をすると渋々と言った感じでトレーナーさんは認めた。
この人がナイスネイチャさんのトレーナーである事は僕はもちろん知っている。
そして今はなぜかナイスネイチャさんは移籍に出されている。
この二人に何があったかはわからないが、どうも何か事情があるらしい。
ただあまり良くないことがあったことは確かなようだ。
「ちょっとな…ごめんな、今は色々考えたが…手伝いはするが、それ以上は出来ないなと思ってる…俺以外にも候補はあるんだろ?」
「はい、えっと…明日から南郷トレーナーさんというところへ行く予定です」
「そうか」
もちろん次のトレーナーを誰にするかというのはあらかじめ老トレーナーが手配をしてくれていた。
次のトレーナー名前を出すと、一瞬その名前を聞いた時にトレーナーさんは反応した。知り合いだろうか?
南郷トレーナー、中堅のベテラントレーナーで短期育成の技術は非常に一流と聞いている。
同時に鬼教官だとも聞いているが、今のトレーナーの教え子ということもあり腕は確かだと聞いている。
(もしトレーナーさんがOKだったらこっちにくる予定だったのだけどなぁ)
そう内心思うがトレーナーにはトレーナーの事情があるのだろう、仕方ない。
「また何回も僕はいいますよ…?いつでもいいですからね」
「ああ、じゃあ次は有名になったら誘ってくれ」
「大丈夫ですよ、嫌でも見るようになってもらいますから」
「はは、その時はトレーナーになっておけば良かったと悔しがってそうだな」
「その時は言ってくれればいいだけです、それにまたたまにはトレーニングつけてくださいね、LANEしますから」
「ああ、分かった」
まあ今は無理なのは仕方ない、でもいつかはなってもらおう。
僕はそう思い彼に微笑みかけた。
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「…なんだ、トレーナーさん…新しい子いるんだ…」
窓の景色からは中の様子までは伺えず、会話も聞こえない。
しかしアタシにはとても楽しそうに見えた。
「契約しちゃったの…?ねえその子と…契約したの?」
「アタシはもういらないの…?」
そんなことはないと思いたい、しかし自然とそんな言葉がアタシから溢れて出てくる。
アタシは努力してるのに、アナタに認めて欲しくて頑張ってるのに。
アナタはそうなんだ、新しい子と契約しちゃうの?
あなたはそんな人だったの?
「見たくなかった…」
そんな景色は見たくなかった、そんなトレーナーさんは見たくなかった。
実際はどうなのか分からないのに、人を疑うアタシも見たくなかった。
そんなことを思いつつもトレーナー室から目が離せないアタシも見たくなかった。
「ねえ…トレーナーさん」
部屋の中では二人はまだ談笑をしていた。
声は聞こえないが二人は笑顔だった。
「トレーナーさん」
あなたは?アタシのことどう思ってるの?
気づくとシュヴァルグランはいなくなっていた、話し合いは終わったということだろうか。
アタシは何も言わず、再び机仕事に戻ったトレーナーさんを遠くから見つめ続けた。
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2024-08-29 19:47
Comments (11)
オチがわかってるけど辛いわ…
ネイチャが!
和樹ネイチャ「この世界ではどうなるんだろうね?こっちのアタシ」 IFネイチャ「ま、しばらくは様子見ですなぁ」 「それに影で動いている連中の相手をしなきゃいけないし」 和樹ネイチャ「ですよねぇ~」ニガワライ
View Replies其の昔エ◯い人は言いました「恋と戦争にルールは無い」と ブチぴょいしてブチ◯してブチ◯して最後に隣にいる奴が勝者だ!殺れるときにヤれ!
トレ「っ!?」 シュ「と、トレーナーさん…?どうかしたんですか…?」 トレ「え…あ…いや、なんでもないよ。ごめんな。」 (な、なんだろう。誰かに睨まれてるような…すごい圧のような感覚があったんだが……き、気のせいか?)
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