ヒーローＶＳヴォルタの話

※にじ創作
※捏造過多

一瞬、視界の端がぶれた気がした。

瓦礫が落ちたか、はたまた炎の熱による空気の揺れか。今はそんなことに気を取られている場合ではなく、ただただこの未曾有の危機に対応する他なかった。
人災でありながらここまでの規模で街を破壊されたことも、人の命が失われたことも、ヒーローとなってから体験したことがなかった。記憶の欠落を抱える自身ならばまだしも、他の面々や街の人間の顔を見ればどれほど深刻な事態か分かるというものだ。おまけに原因が、主犯が、近しい人たちということならば、余計に。
「るべ！こっちは任せる！！」
「了解。」
手短に言葉を交わす中でも、避難誘導と怪我人の確保は行われていく。自分の「足」が、既にこの場を離れた伊波の「子供たち」が、最もこの手の活動に優れていた。爆風による熱波の中で、声を上げながら瓦礫に埋もれた市民を探す。息絶えたものも、多く見た。そこに手を貸す時間はなかった。

「……ん？」

ふと、奇妙な違和を見つけた。
それは視界の端が揺れるような錯覚が、形を得たような、輪郭を帯びて目の前に現れたようなものだった。「それ」は爆発からも爆風から逃れたのか、まるで別世界のようにぽつんと建っている。
築年数もそう新しくは見えない、どこにでもありそうな、普通の雑居ビル。
「……こんな建物、ここにあったっけ。」
思わず口からこぼれ落ちた言葉は、この場に残っていた先輩ヒーローからの掻き消えそうな呼び声によって意識の外へと放られた。
今はただ、助けられる者を助ける。その一点のみだった。