~猛毒の霧~

『ボス、戦況は芳しくないっす。このままだと警察と民兵に……』

『ああ……わかってる。だが追加の投入戦力は、もう枯渇しかけて殆ど残ってねェ……。』

『アレを呼ぶんすか……?』

『仕方が無ェ……ある種の焦土作戦になるだろうな……。』
『あのドブで産まれてクソに育てらてたようなゲス野郎に「シゴト」は任せたくねェが……。』

(部下達の顔が青ざめる)

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『バスは手配してある。日付が変わる翌日午前4時丁度に出発する。おめェらはその間に最低限の荷物を済ませて出発の準備をしろ。』
『予め言っておくが、寝坊や遅刻はすなわち窒息死を意味する。アイツは人の喉や気管支が焼け爛れて死ぬ様を観るのが大好きなんだ……。録画だってして後で眺めてる。』
『だから今回だけは、絶対に遅刻すんじゃねェ。あのゲス野郎の悪趣味に付き合わされたくなければな。』

(部下達が命が惜しいように急いで支度を始める)

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IPSO (Independent Public Safety Organisation)による市民データ及び諜報記録

本名: <不明>
市民番号: <登録なし>
住所: <記録なし>
よく使う電話番号: 0900-████-████-██
クラス: 未登録
所属: マローダーズ・オブ・マルノウチ(推測)
敵性市民係数: 66%

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2067年頃に発生した、茨城県南部での化学研究所とそのプラントにおいて、試験体「XGG-37564」が何者かによって盗難された事件以降、各地で有毒ガスによるテロ行為が散発しているのが確認されている。
また、更に北方の日立市近辺にある、気体に関する流体力学を専門とする大学及び大学院に所属していた学生が、上記の盗難事件より1年ほど前に、行方不明になっている。

我々と同じくして、上記2項目に何らかの関連性がないか、現地治安維持勢力らは捜査に躍起になっているようだが、依然として確たる証拠は、これを書いている現在(2070-██-██)であっても尚、掴めていない状況である。

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また、この学生自体が、いつどこで生誕したのか、日本国籍を持っているかどうかの証拠すら掴めていない為、我々のような捜査機関が当該大学に対して立て続けに捜査を行っているが、当然ながらこれも依然として確たる証拠を押さえられないままでいる。

地方裁判所の令状に基づき、何度も何度も当該大学やその学生、教授ら等のワークスペースを、不適切な表現ではあると承知しているが、「荒らし回り続けていて」、当該大学に所属する人物の大多数はかなりの神経症に悩まされているようである。

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そしておそらくいえること: 「被疑者」はほぼ確実に「マローダーズ・オブ・マルノウチ」の制御下にある。
つまり「マローダーズ・オブ・マルノウチ」の誰かが「被疑者」に犯罪行為の直接指示をしている可能性が極めて高いのだ。
だとすれば、なんとも悍ましい連中である。

職員 ZB99-AA6B-XZ99-0001

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2024-11-16 22:20

 yukke3053


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