<オリフレ＞ゾ

「どうも！初めまして！『ゾ』です！『ハイナク』って名前もあるので好きな方で呼んで欲しいのです！
　ゾは何でもできる子なのです！荷物持ちや畑仕事みたいな力仕事も出来るのです！
　喉が渇いた方にはミルクやバター茶をご用意できるのです！
　寒いときには特製毛布を掛けてあげるのです！
　だから何か困ったらゾにおまかせなのです！』
ヤクとウシのハイブリッド家畜『ゾ』のオリフレです。
『ゾ※メスの場合はゾモ』はチベットでの呼び方で同じくヤクとウシとの交配が盛んなモンゴルやロシアのブリヤート共和国などでは『ハイナク』と呼ばれ、英語圏では『ヤトル（yak+cattle=yattle)』、『ヤコウ（yak+cow=yakow)』という合成語で紹介される事もあります。
高山地帯に住む人々にとってヤクは毛、肉、皮、乳をもたらす重要な家畜であるものの、その一方で分断された地形の影響による固有種化が進んだ事で肉や乳の品質にばらつきがある点や生育に時間がかかる点などが弱点とされており、品種改良を重ねた事で産物の品質が安定していてヤクよりも成長スピードの速いウシと掛け合わせることでその欠点を解消する試みが古くから行われてきました。
結果として生まれてくるゾは元となっているヤクやウシよりも優れている要素を多く持っており、性格が穏やかで育てやすく、ヤクよりも大きめな体は耕作作業や荷運びに使いやすい上に当然ながら肉や皮の量も多く、搾乳量もウシやヤクよりも多い上に脂肪分が高いとされています。
一見良いこと尽くめなゾですが交雑種によくある問題としてゾの雄には繁殖能力が無く（雌は繁殖可能でヤクの雄若しくはウシの雄と掛け合わせることができる）ゾだけでは個体数を増やす事が出来ないため、ゾを手に入れるには多くの場合ヤクの雄とウシの雌の組み合わせで繁殖させる必要があり、それが可能なのはヤクの生育に適した高山地帯とウシの生育に適した草地の両方にアクセスできる限られた地域である事から一般的な家畜にする事は難しいとされてきました。
しかし現代ではウシの繁殖の多くが凍結精子を用いた人工授精で行われるため、ヤクの凍結精子さえ手に入れば比較的容易にまとまった数のゾを手に入れることが可能になった事からモンゴルの北側にあるロシアのトゥバ共和国やブリヤート共和国を中心に飼育数が増え始めており、ゾの今後には多くの期待が寄せられています。