酢豚になったお兄ちゃん（なってない）

　この間、高校に進学したお兄ちゃん。

　男の子時代に比べると友達も増えて、良い感じ。
　今度こそ、健全な社会人デビューができるかも？

　てわけで、兄の社会勉強のために、高校ではアルバイトをさせる事にした。
　せめて、自分のガチャ代くらいは稼いでもらわないと。

　お兄ちゃんは、近所の中華料理屋の鬼米飯店でウエイトレスのアルバイトをすることになった。
　ここを選んだ理由は、兄いわく。

まひろ「いやあ、最初はアキバのメイド喫茶にしようかとも思ってたんだけどさ。
　ここの中華屋って、まかない料理が、スゲー旨いらしいんだ。
　店長が、昔中国で修行してきた本格派の中華料理人らしくってさあ。
　ついた通り名が『中華の鉄人』。
　後、制服のチャイナドレスも可愛いしね。」

　そして……兄が中華料理屋のバイトを始めてから、3か月ほど経って。

みはり「お兄ちゃん、ずいぶん丸くなったわね。太った？」
まひろ「女の子に太ったとかいうなーっ！
　別にいいだろ？　女の子はぽっちゃりしてた方が可愛いし。」
みはり「にしても、限度があるでしょ？」

まひろ「だって、うちの店のまかないって、凄く美味しいし。
　余った食材で作った残り物チャーハンに、麻婆豆腐かけた奴とか、一度食べ始めたらやめられなくなるんだ。
　店長のおじさんも『食え、食え』って、どんどん勧めて来るし。」

みはり「なるほど。　店長の魂胆がわかったわ。
　お兄ちゃんにどんどんと食べさせて太らせて。
　最後は、丸々と太って美味しそうなお兄ちゃんを、酢豚にしてお店に出すつもりね。」

まひろ「何それ、怖い！？」

　翌日から、お兄ちゃんは、必死でダイエットに励むのでした。

まひろ「ひ～ん！　酢豚にはなりたくないよ～！」

　でも、お店のまかない料理のおかわりはやめられなかったみたい。

まひろ「だって、中華の鉄人の作った本格派だし……。」