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ある王国の話「吉報」

そんな日々が続いたある日…

「失礼致します、ルイズ様、お客様がお見えのようですが…」
「わたくしに?どなたでしょう…」
「…ガーランド伯爵様の使いの方と申しております。」
「…お父様の?」
ルイズはふと考え、口を開いた。
「了解致しました、お会い致しますわ。」

「おお、ルイズ様!ご無事でなによりでございます、お会い出来て嬉し……」
「……この痴れ者めっ!!」
言うが早いか、ルイズは憤怒の形相で剣を抜き、使者を名乗る男に襲い掛かった!
「ひいっ!?な、なぜ…」
「白々しい!よくも亡くなられたお父様の名を騙り、わたくしを陥れようなどと無礼千万!お前のその穢れた舌の根ごと削ぎ落として、二度とそんな真似が出来ないようにしてさしあげますわ!」
ルイズの言う通り、ガーランド伯爵は亡くなっているはずなのだ。
フランヴェール王国が陥落した際、帝国は王国の男性王侯貴族を残らず処刑しているからである。
ガーランド伯爵は辺境伯であるものの、それなりの規模の領地と影響力のある貴族である事に変わりはない。例外的に見逃されたと言う事は考えられないのだ。
「お、お待ち下さいルイズ様!証拠はここに、よくご覧下さいませ!」
使者は必死に持参した書状をルイズに見せた。
「これは……」
差し出された書状を受け取り確認すると、封に用いられていたのは間違いなくルイズの実家、ガーランド家の家紋があしらわれた印章であった。これを持っているのはただ一人、ガーランド伯爵意外にあり得ない。
封を開け、ルイズは中の手紙を見てその持つ手を震わせた…
「…間違いありませんわ…これはお父様の筆跡…」

『我が娘、ルイズへ
報せが遅れた事、どうか許して欲しい
私は今、命からがら隣国に脱出し、その地の友人に匿われている。ここならば帝国軍の目は届かないであろうが、残念ながら私はもはや表立って行動することは出来ない…
お前が王国騎士団として、立派な働きをした事は聞いている。帝国に囚われ、辱めを受けようと諦めず、この度見事生還を果たし、今もフランヴェール王国解放軍として戦っている事を、商人ギルドからの伝手で知った。我が娘として父はお前を大変誇りに思う。
本当ならば娘であるお前に戦などさせず、私が剣を振るい戦わんとは思うが…私ももう年だ、遠からず迎えが来るこの老いぼれのやさ腕を振るったところで、悔しいがお前のような働きはかなうまい…
だが、ならばせめてお前たちの助力となるよう、私の人脈を用いて可能な限りの援助をさせて欲しい。何かと入り用でもあるだろうから、必要な物があればそこの使いに申し付けるが良い。
…愛しているぞ、ルイズ。我が誇りの娘よ…』

「…お父様…ご無事で……」
ルイズは手紙を読みながら、その場に泣き崩れた。

「……無礼はわたくしの方でございました、どうかこの通り、お詫び申し上げますわ…」
「いえいえ、致し方ない事でございます。伯爵様共々、私も可能な限りルイズ様や皆様の支援をさせていただきます故、なんなりとお申し付けください。」
「…ありがとうございます。父にも是非、よろしくお伝えくださいませ…♪」
顔を上げたルイズは、見上げた空のように晴れ渡った笑顔を浮かべていた。

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2025-02-23 05:42

 千種よろず


Comments (2)

にこいち 2025-02-24 10:30

亡くなったと思っていた人がまさか生きていたなんて、これ以上の吉報は無いですよね 正直に言うとルイズ副隊長が内通者なんじゃないかと疑ってたんですが、否定されて良かったです

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