あの子の声が僕を呼ぶ。

 今頃、元気にしてるかな。

 あの子と会わなくなってから、夏は十ニ回も訪れた。僕のことなんて、もうとっくに忘れてるかな。

 それでも記憶の中の君は、永遠に穢れを知らぬ無邪気な少女の侭、僕の名前を澄んだ声で幾度となく繰り返す。

 何もかもが眩しすぎたあの夏の、なかんずく眩かった太平洋の潮の香りが僕の体内を巡ると、気付けば今夜も又忘れじのあの子を想っている。

 (※実在の人物、団体、出来事とは一切関係ありません。)
 

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2025-03-16 23:16

 消しカスヤ


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