金髪巨乳っ子は二人きりになりたい

春のある日、俺こと浅井田銀二(あさいだぎんじ)は街に来ていた。「劇場版・魔法少女フリスクちゃん」のBDを買う事が目的だ。
店舗特典のために直接店に行かないといけないのが面倒くさいが、まあ、こんな穏やかで晴れ晴れとした日にずっと家の中と言うのも味気ない。
予約は済ませているので、ゆるゆる目的地まで歩いていると――

①嫌な奴が来た(1-2枚目)
「ぎーんじーー!!」
後ろから嫌な声がするがとりあえず無視しよう。
「おい、銀二!」
ムシムシ。
「おい、クソ童貞無視すんな!」
と同時に左ひざに痛みが走る。仕方なく振り返ると、俺にとっての厄災、九条寧子(くじょうねいこ)が立っていた。
「街中で下品な事言ってんじゃねーよ」
「うるせー。てめーが無視してるからだろ。いいから付き合えよ」
「いや、用事があるから無理だ」
「いや、そんな言い訳はいいから付き合えってんだよ」
と、無理やり付き合わされる事になってしまった。まあ、目的のものは予約済みだからいいが……

②怒っていらっしゃる(3-5枚目)
「で、わざわざ人を引っ張ってきて公園でお花見デートとは似合わないな」
厄災が連れてきたのは、季節感満載の公園だった。
「ア"!? お前とデートなんてゲロすすってもするわけねーだろ。待ち合わせだよ。ホラ、そこに立ってるだろ」
と指をさした先には、金髪で、何と言うか、おっきい子がほほ笑み佇んでいる。
「おーい、かえで! 来てやったぞ!」
その声に、おっきい――いや、一ノ瀬かえでちゃんは顔を綻ばせてえが……おが俺を見て陰った。
(お、怒っていらっしゃるーーー!!!)

③その目をやめてください(6-8枚目)
「お姉さま、そちらの方は?」
「何言ってんだ、銀二だよ。ああ、童貞の顔なんて覚えてねーか」
DDうるさい奴は下品に笑う。
「か、かえでちゃんごめんね。こいつが無理やり……」
「ちゃん!? こいつ!?」
俺にだけ聞こえるような声で、かえで――、一ノ瀬さんは冷たい怒りを向ける。
一ノ瀬さんは寧子の事が好きなのだが、この鈍感女は全く気付いていない。今日は二人きりでのデートを楽しみたかったのだろうに、俺が付いてきたから不満なのだろう。ただ、そのお相手は、
「そのバッグの中身弁当か? おお、うまそうだな」
こんな感じでのん気にかえでのバスケットを漁って弁当を勝手に取り出して蓋を開ける。
「これ、お前が作ったんじゃないよなぁ」
「お恥ずかしいですが、我が家のメイドに作っていただきました。私が作ると、その……」
そう言って一ノ瀬さんは困ったような笑みを浮かべる。そう、彼女は寧子のために弁当を作ってくることがあるが、なんか黒い毛玉とか……いや、これ以上は思っても○されそうだからやめておこう。
「どっか座れるところ探してとっとと食おうぜ。オラ!」
と俺のケツを蹴る。お前も探せという事だろう。チラリと後ろを向くと、一ノ瀬さんはずっと冷たい笑みを俺から外していないようだった。どっかで言い訳付けて帰りますから、その目をやめて下さい。

④よし、帰ろう(9-13枚目)
「うめえな!」
お弁当を広げるのによい芝生の広場を見つけ、三人は腰を下ろす。すかさず寧子は一ノ瀬さんのバスケットからお弁当を取り出して遠慮なしに食べ始める。
一ノ瀬さんはそれを気にすることもなく、がっつく寧子に柔らかな視線を送る。
「お姉さま、こちらもいかがですか?」
「お、その黒い毛玉はお前が作ったんだろ?」
と、弁当箱の隅にある明らかな失敗作を見つける。一ノ瀬さんはそっちじゃないと困ったような表情を作るが、寧子の箸はそれをとらえて口に運ぶ。
「クソまずいな!」
無理して食べなくても、と一ノ瀬さんは言うが、寧子は「もったいない」と言ってにかっと笑う。それを見て一ノ瀬さんも照れたようにほほ笑んだ、が――
「銀二さんも、これ、いかがですか? ”全部”」
と、毛玉入り弁当箱を向けてくる。お姉さまに食べさせるぐらいならお前が食え、的な事なんだろうが、毛玉の味よりその顔が怖いです。
拒否すると後が怖いので、仕方なく箸を伸ばそうとすると俺のスマホが鳴る。
席を外して電話に出てみると、友人から「フリスクちゃんの円盤買った?」から始まるどうでもいい用事だったが、これを幸いに二人の元に戻ると、
「会社からの呼び出しで、俺はこの辺で」
とウソをついた。すると、
「まあ、まあ、それは残念ですわ!」
一ノ瀬さんは言葉とは真逆の今日一の笑顔を作る。流石にそれは、傷つきます……。寧子は「ご愁傷さま~」とにやり。まあ、こっちはどうでもいいや。
ともあれ、なんとか帰る口実が作れて助かった俺は、そそくさとその場を離れたのだった。

⑤膝枕(14-15枚目)
銀二が帰った後、寧子とかえでは二人きりとなる。
寧子はかわらず弁当をがっつき、食べ終えると大あくび。そして、「ちょっと膝借りるぜ」とかえでの膝の上に頭を乗せる。
かえでは一時驚きはしたものの、想いをよせる相手からの不意のご褒美に喜びの表情を湛える。
「ん? どうした?」
「いえ、眠いのでしたら、このままお昼寝でもして下さい」
「腹いっぱい食ったら眠くなったし、ちょっとだけ寝るわ」
と、遠慮なしに目を閉じる。かえでは桜舞う広場で、寧子の寝顔をずっと眺め続けた。

⑥(実の)お姉さまはちょっと苦手(16-18枚目)
ひと時、眠っていた寧子は目を開ける。
「おはようございます。まだお休みになられても良いですよ」
「もう起きる」と言って寧子は立ち上がる。もう少し二人でいたいかえでは、公園を歩く事を提案。寧子は大あくびで、首を縦に振る。
公園をゆっくりと歩きながら、二人は他愛ない会話で盛り上がるが、ふと、
「そう言や、ぼたんのアネキは呼ばなかったのか?」
と言う。
ぼたんはかえでの歳の離れた姉。寧子も小さい頃から良くして貰ったので親しい間柄だ。ただ、かえでの方は寧子と違い苦手としている。
歳が離れているのものあるが、いつもぶすっとした表情でかえでをにらみつけるだけで会話らしい会話を殆ど出来なかった事、その印象のままぼたんが大人になって仕事であちこちを飛び回るようになると、接点がほぼなくなってしまった事が大きい。
「私、ぼたん姉さまは、少し苦手です」
「えーっ! アネキはお前のことすげー好きだぜ!?」
「本当ですか!?」
二人とも、互いの言葉に驚く。寧子が言うには、ぼたんはかえでが可愛くて仕方がないが、どう付き合っていいかわからないから、声を掛けられずにいるのだとか。

⑦二人でいい(19-20枚目)
「今度お前から声かけてみろよ。すげー喜ぶぜ」
その言葉に、懐疑的な表情でかえでは首を傾げる。
「しょーがねーな。アネキは俺が誘ってやるよ。今度三人でメシくおーぜ!」
にっこりと笑う寧子と反対に、かえでは不安そうな表情を作る。
「私は、お姉さまと二人の方が……」
と小さく呟くが、寧子にその声は聞こえない。かわりに、不意に手を握られる。
「あっちになんか出店出てるな! 行ってみよーぜ!」
と寧子はそのまま走り出す。かえでは一瞬慌てるが、手を握り返してほほ笑んだ。

――
赤目指定はピンク目になる事が多いような。気付いて一部は作り直し。一部は構図的に厳しいのでそのままで

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2025-03-23 13:34

 松永久秀子


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