「おしゃれも家事のうち？」〜美柑の休日ファッション奮闘記〜

今日は珍しく完全オフの休日。朝からリトは友達とゲーム大会、ララは発明部屋にこもりきり。

「……誰も相手してくれないなら、たまには自分の時間、ってやつかな」

そう呟いた美柑は、エコバッグを手に一人、ショッピングモールへと足を運んだ。

目当ては、新しい春服。
最近ちょっと背が伸びた気もするし、もう少し「お姉さんっぽい」服にも挑戦してみたい。

——そう思って入った一軒のセレクトショップ。

「わ、広っ……」

思った以上に品ぞろえが豊富な店内。どこか大人びた雰囲気に緊張しつつも、美柑は足を踏み入れた。

「いらっしゃいませ〜。ご自由にご試着どうぞ〜」

店員さんの笑顔に背中を押され、美柑は試着室へ。

まず手に取ったのは、レザージャケット。

「ふむ……これを着こなせたら、ちょっとかっこいいお姉さんって感じかな」

鏡の前でキメ顔をしてみたが……

「……なんかバイク乗りみたいになっちゃった。ていうか、肩まわりゴツく見える！ 却下！」

次に選んだのは、黒とピンクを基調にした地雷系ファッション。

「前に雑誌で見たやつ……ちょっと怖いけど、可愛いって言えば可愛い……のか？」

袖にリボン、厚底靴、ゴスっぽいフリル——

「……これで公園歩いたら確実に通報されそう」

すぐに脱いで次へ。

紫のスリット入りドレスを着たときは——

「え、なんかすごい……夜景の似合う女……」

スリットから脚がちらり。たしかにオシャレだけど、小学生にはどう考えても場違い感がすごい。

「これは……十年後まで封印かな」

続いてオフショルダーのトップス。肩がちらりと見えるやつ。

「えーと、これは……寒い。普通に寒い」

季節感ゼロでアウト。

ギャル系制服ファッションにチャレンジしたときは、鏡の中の自分を見て苦笑した。

「……なんか、リトの学校に潜入する怪しい人みたい……」

ロリータファッションはすごく可愛かったが、パニエが大きすぎて歩けない。

花柄の着物はしっとりしていて気に入ったが、帯の締め方が難しすぎた。

オフィスレディ風のパンツスーツでは、「いらっしゃいませ、課長〜」と自分でやって苦笑。

極めつけは——

「チャ、チャイナドレスって、こんなにピタッとしてるんだ……！」

さすがに恥ずかしくて、そっとカーテンを閉じた。

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ひとしきり着替えを終えたあと、美柑はため息混じりにベンチに腰かけた。

「はぁ……いろいろ着たけど、どれもこれもイマイチしっくりこないなぁ。ていうか……」

店内をぐるりと見渡し、ぽつりと呟いた。

「なんでこんなに色んな種類の服が置いてあるんだろう……？」

あまりのバリエーションに、自分が何を買いに来たのかすら分からなくなってしまった。

その後、美柑は結局、白いカーディガンと淡いピンクのスカートという、
無難でちょっとだけ春っぽい組み合わせを選んで、ほっとした顔で帰路についた。

（やっぱり、自分に似合うって思えるのが一番だよね）

そんな美柑の姿は、大人びているようで、やっぱりどこか子どもらしさも残っていた。

でも、それが彼女らしさ。

今日も、しっかり者の美柑は、自分なりの「おしゃれ」を学んでいた。