重巡勇者熊野で巡るソーサリーの旅～罠の都カーレ⑧～

目の前の小さな聖堂では聖職者による説法が行われているのが聞こえてきていた。
熊野が聖堂に入ろうと扉を開けると、ちょうど母親と少年の親子連れが入れ替わりで出てきた。
「お母さん、あの人は本当に聖者さまなんだね！サレンの弟は足が悪かったんだけど、昨日あの人の質問に答えたら足が治ったんだよ！生まれて初めて走ったんだって！」
「なるほど、これはもしかしたら北門の呪文の情報が手に入るかもしれませんわね…」
聖堂に入ると大勢の老若男女が床に座っているその前の一段高くなってる場所にオレンジ色のローブをまとった男が立っていて話をしていた。
「ほかにスラング様の試練に挑みたいものはいるか？私の質問に答えることができれば、スラング様はどんな願いもかなえてくれるだろう。ただし、質問に答えられなかった場合は自らの神への信仰を捨ててスラング様を崇めねばならんぞ」
「なら私が挑戦いたしますわ！」
「…ほう。それであなたの信仰する神は？」
「…信仰してるわけじゃないけど、なんか一方的に私の加護についてくれてるが正義の女神リーブラですわ」
「いや、君…それはちゃんと信仰しなさいよ…コホン。しかし、正義の女神リーブラか。聞いたことがないな。まあ、スラング様のほうが強大な神だと知ることになるだろう。さて、リーブラがスラング様の試練でどれだけあなたの助けになるか見せてもらおう。
私の質問に正しく答えられたなら何でも願いを聞き入れよう。ただし、答えることが出来なければリーブラへの信仰を捨てスラング様へ帰依するのだ。いいかね？」
コクリとうなずく熊野。
「長老ビックフットが南に３ハロン歩いてオーツ麦の種を撒き、東に２ハロン歩いてトウモロコシの種を、続いて北へ５ハロン歩いてこむぎの種を、最後に南西に４ハロン歩いて干し草の種を撒いた。わかったかね？質問に答える準備はできたかね？」
聖堂内に緊張が走り、熊野も無言で頷き、
いよいよ聖職者がスラングの試練を開始しようとしたー。