『英雄』

彼女は英雄。
その走りは人に、ウマ娘に夢を与えた。
彼女の手にした栄光の数々、彼女の成し遂げた偉業の数々。
それはまさしく、我が国にもたらすにはあまりにも大きく偉大過ぎる物であっただろう。
彼女はそれ程のことを成し遂げたのだ。

が、それは結果論に過ぎない。
彼女は本当の姿は何か？
彼女は英雄と呼ばれる様な存在であるのは変わらない。
しかし、それは彼女のやってきた、成し遂げた物についたレッテルでしかない。
素顔の彼女を、我々は見ていないのだ。

彼女の本当の姿、本当の素顔。
彼女自身は何を思い、何を考えて行動していたのだろうか？
それ分からない。
しかし、現役時代彼女は走る事だけが何よりの生き甲斐であり、唯一無二の快楽であった。
何よりも優先され、誰よりも望んでいた。

『ウマ娘、彼女達は走るために産まれた』
しかし彼女は…
『走るために、ウマ娘で産まれた』
こう言えるのではないだろうか。
彼女にとっては、何よりも走る事が全てだったから。

―『日刊トゥインクルBOOK』第45号。
「英雄と呼ばれたウマ娘の真実」より、トレーナーの手記より引用。