君の視線、ちょっとズルいよ…

ある夏の日、奉仕部の活動が終わった後、比企谷と由比ヶ浜はプールの監視当番を任されていた。だが、学校のプールには誰も来ず、退屈な時間が続く。

「ヒマだね〜、比企谷～。…あ、ねえ、泳いでいい？誰もいないし。」

そんな軽いノリで、由比ヶ浜は控室で見つけた競泳水着に着替え、無邪気にプールへ飛び込んだ。比企谷は目のやり場に困りつつも、目を離せない。

その後、夕方になり帰り支度を始めた頃、由比ヶ浜が更衣室から出てこない。

「おーい、どうしたー？」と声をかけると…

「ねぇ、比企谷…ちょっとだけ、ここで休んでかない？」

水着のままベットに腰掛けた由比ヶ浜は、頬を染めながらぽつりとつぶやいた。

ベットの隣に座ると、距離が近くてドキドキが止まらない。

「今日さ、私、頑張ったでしょ？だから、ちょっとだけ…甘えてもいい？」

そう言って、結衣は比企谷の肩にそっと頭を預けた。

淡い夕暮れの光の中、どこか大人びた横顔に、比企谷はふいに目をそらすしかなかった。

けれど結衣は、その視線に気づいていて——

「…ねぇ、もしかして、見てた？」

ふっと微笑む彼女の声に、比企谷は何も言い返せなかった。