この心、仕えるはただ一人
「……なぜ、このような服を着ねばならぬのだ」
黒を基調とした、フリルの多いスカート。真っ白なエプロン。胸元にはリボン、頭にはそれらしくヘッドドレスまで付けられている。
これは、いわゆる──メイド服、というものだ。
私は鏡の中の己を見つめながら、深いため息をついた。
特異点での混乱の末、なぜか私はこの格好を強いられている。当然のこと、私はこの姿に納得していない。
否。……していなかった、が、正しいかもしれない。
なぜなら──。
「モルガーン!!」
勢いよく扉が開かれ、明るい声が響いた。
「すごい拒んでたけど、すっごく似合ってるよ! わたしも着たんだ、一緒にがんばろ?」
満面の笑顔で駆け寄ってきたのは、私の伴侶。愛しい妻、藤丸立香だった。
彼女もまた、同じくメイド服に身を包んでいる。フリルたっぷりの可愛らしい装いに、髪がふわりと揺れて──私は、まばたきすら忘れて見惚れていた。
「…………」
口がきけないのではない。言葉が、喉の奥で絡まって出てこなかった。
視界の隅に、花が舞ったような錯覚を覚えた。
彼女は、あまりにも可愛すぎた。
この格好を否定した私自身を、今は叱りたい気分である。
「……このような服を私が着るのは、気に入りませんが」
ようやく声を絞り出すと、彼女のほうはそんなことも気にせず笑っている。だが私は、その続きを静かに告げる。
「──まあ、良いでしょう。悪いことばかりでは、ありませんでしたから」
そして、私は彼女の顎にそっと手を添えた。
人差し指で顎を持ち上げ、顔を覗き込む。顎クイ、という仕草を最近覚えたのだが、こうして見ると実に効果的だ。
「モ、モルガン……?」
立香の頬が、ぱあっと赤く染まった。
その反応に満足しつつ、私は艶やかに囁く。
「我が妻。貴女には──専属のメイドの名を与えます」
「えっ!? わ、わたしが!?」
「当然でしょう。私だけの、貴女なのですから」
彼女は目を瞬かせ、慌てて言い返す。
「でも、バーゲストみたいにお茶とか淹れられないし……!」
「心配は無用です。我が妻」
私は彼女の頬にそっと触れた。
「貴女は、私の隣にいれば良い。そして──私の思うがまま、愛されてください」
「……っ!!」
照れに照れた彼女は、たじろぎながら後ろへと下がる。
が、私はその分じりじりと距離を詰めた。
「逃げても無駄です。貴女は今や、私の専属メイドなのですから」
「モルガン、メイドってそういう立ち位置じゃないと思うんだけど──!」
「では、私の解釈で再定義しましょう。貴女は、私だけのものであるということです」
私はそう告げて、もう一度彼女の手を取った。
繋いだ手をそっと引き寄せ、愛しげに口づける。
「さて、我が妻。これからの時間は、貴女と私だけのものです」
「……ええと。特異点修正は?」
「私を誰だと思っているのですか?速攻でカタをつけます。」
「相変わらず、自信満々だなあ。でも、頼りにしてる」
そう言いながら、彼女は私の胸元に顔を埋める。
メイド服同士、くっつくとレースとフリルが重なって、なんとも華やかで……そして、私はそれを何よりも誇らしく思っている自分に気づいた。
可愛い我が妻と、今こうしていられること。
この姿も、時間も、誰にも邪魔されることなく──
我が愛は、ただ貴女のために。
黒を基調とした、フリルの多いスカート。真っ白なエプロン。胸元にはリボン、頭にはそれらしくヘッドドレスまで付けられている。
これは、いわゆる──メイド服、というものだ。
私は鏡の中の己を見つめながら、深いため息をついた。
特異点での混乱の末、なぜか私はこの格好を強いられている。当然のこと、私はこの姿に納得していない。
否。……していなかった、が、正しいかもしれない。
なぜなら──。
「モルガーン!!」
勢いよく扉が開かれ、明るい声が響いた。
「すごい拒んでたけど、すっごく似合ってるよ! わたしも着たんだ、一緒にがんばろ?」
満面の笑顔で駆け寄ってきたのは、私の伴侶。愛しい妻、藤丸立香だった。
彼女もまた、同じくメイド服に身を包んでいる。フリルたっぷりの可愛らしい装いに、髪がふわりと揺れて──私は、まばたきすら忘れて見惚れていた。
「…………」
口がきけないのではない。言葉が、喉の奥で絡まって出てこなかった。
視界の隅に、花が舞ったような錯覚を覚えた。
彼女は、あまりにも可愛すぎた。
この格好を否定した私自身を、今は叱りたい気分である。
「……このような服を私が着るのは、気に入りませんが」
ようやく声を絞り出すと、彼女のほうはそんなことも気にせず笑っている。だが私は、その続きを静かに告げる。
「──まあ、良いでしょう。悪いことばかりでは、ありませんでしたから」
そして、私は彼女の顎にそっと手を添えた。
人差し指で顎を持ち上げ、顔を覗き込む。顎クイ、という仕草を最近覚えたのだが、こうして見ると実に効果的だ。
「モ、モルガン……?」
立香の頬が、ぱあっと赤く染まった。
その反応に満足しつつ、私は艶やかに囁く。
「我が妻。貴女には──専属のメイドの名を与えます」
「えっ!? わ、わたしが!?」
「当然でしょう。私だけの、貴女なのですから」
彼女は目を瞬かせ、慌てて言い返す。
「でも、バーゲストみたいにお茶とか淹れられないし……!」
「心配は無用です。我が妻」
私は彼女の頬にそっと触れた。
「貴女は、私の隣にいれば良い。そして──私の思うがまま、愛されてください」
「……っ!!」
照れに照れた彼女は、たじろぎながら後ろへと下がる。
が、私はその分じりじりと距離を詰めた。
「逃げても無駄です。貴女は今や、私の専属メイドなのですから」
「モルガン、メイドってそういう立ち位置じゃないと思うんだけど──!」
「では、私の解釈で再定義しましょう。貴女は、私だけのものであるということです」
私はそう告げて、もう一度彼女の手を取った。
繋いだ手をそっと引き寄せ、愛しげに口づける。
「さて、我が妻。これからの時間は、貴女と私だけのものです」
「……ええと。特異点修正は?」
「私を誰だと思っているのですか?速攻でカタをつけます。」
「相変わらず、自信満々だなあ。でも、頼りにしてる」
そう言いながら、彼女は私の胸元に顔を埋める。
メイド服同士、くっつくとレースとフリルが重なって、なんとも華やかで……そして、私はそれを何よりも誇らしく思っている自分に気づいた。
可愛い我が妻と、今こうしていられること。
この姿も、時間も、誰にも邪魔されることなく──
我が愛は、ただ貴女のために。
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2025-05-10 20:57
Comments (8)
这个我是真喜欢
View Repliesジャンヌオルタとぐだ子カップリングも見てみたいですね!
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