トレーナー「大丈夫？」オル「余は痛くない余」

オルフェーヴルの「王の間」（彼女がそう呼ぶ部屋）。薄暗い部屋に、重厚な玉座が夕陽に照らされ、夕陽が窓から差し込み、彼女の金色の髪を照らす。オルフェーヴルは玉座に深く腰掛け、静かに俯く。頬には一筋の涙の跡。トレーナーは抱えていた書類を落とし、彼女の異様な光景に息を吞む。

落とした書類を気にせず、トレーナーが「お、オルフェーヴル？ どうしたんだ？」と声をかけると、彼女はゆっくり目を開き、その宝石の様な瞳が鋭い眼差しでトレーナーを捉える。
彼女の声は低く、抑えた威厳に満ちている。

「…トレーナーか。余を驚かせるな。…この余に、思いもよらぬ試練が降りかかった。…余の口内に…炎症が…できておる。…『口内炎』、などと呼ばれるものだ。」

彼女は「王」の誇りを保つよう、顎をわずかに上げ、トレーナーを静かに見据える。だが、瞳の端に光る涙と、握りしめた拳の震えが、彼女の内なる葛藤を物語る。トレーナーは、彼女の荘厳な口調と「口内炎」という日常的な言葉のギャップに、思わず「ぷっ」と小さく笑ってしまう。

オルフェーヴルの瞳が一瞬、危険な光を帯びる。彼女は玉座から身を乗り出さず、静かに、だが凍てつくような声で言い放つ。

「…貴様。余の苦しみを、笑うだと？ この天上天下唯我独尊たる余を、侮辱する気か？ 不敬の代償、その身に思い知らせてやろう。」

彼女の言葉は静かだが、部屋に重い威圧感が広がる。トレーナーは背筋に冷や汗を感じ、慌てて手を振る。だが、オルフェーヴルがトレーナーを睨みながら口を動かした瞬間、口内炎がピリッと痛み、彼女の顔がわずかに歪む。「…っ！」と小さく息を漏らし、頬を押さえて眉を寄せる。静かな怒りの表情は、痛みに耐える脆い姿に変わり、玉座の威厳とのギャップがトレーナーの胸を締め付ける。

トレーナーが「ごめん、笑うつもりじゃ…！ 大丈夫か？ 薬持ってくるよ！」と慌てて言うと、オルフェーヴルは痛みを堪え、トレーナーを睨みながら低く呟く。

「…貴様の謝罪、受け入れてやる。だが、この痛み…余の王たる誇りを汚す不届き者だ。…こんな些細なことで、余が屈すると思うな。」

彼女の声は威厳を保つが、瞳には再び涙が浮かび、静かに頬を伝う。トレーナーの気遣いに、彼女は一瞬、鋭い視線を緩め、照れ隠しに鼻を鳴らす。