黄昏の城門

② アピールポイント
赤く染まる夕空と乾いた砂路の対比が、視覚的に劇的かつ情緒的

廃墟化した城壁と開かれた門が、過去と未来、境界と自由を象徴

一本道構図により「選択」「導き」「帰還」など物語性を強調

描き込みすぎないシンプルな筆致と自然光が、見る者の想像を膨らませる余白を持つ

③ 紹介文
『黄昏の城門』は、かつて栄えた街の外縁にひっそりと佇む、朽ちた城壁とその門を描いた情景作品です。
陽が落ちかけた空は深紅に染まり、空と地面が溶け合うような温かくも寂しい光に包まれています。

崩れかけた壁、石畳に刻まれた風の跡、そして奥に見える黒く開かれた門——それらはかつて誰かが通い、誰かを迎え、誰かが去っていった痕跡を物語っています。

この作品は、**「過去に何があったのか」そして「この先に何が待つのか」**を想像させ、見る人に静かな余韻と問いを残します。

④ 物語
―「夕暮れが訪れるたび、あの門の前には、ひとりの影が立っていた。」

その城塞は、かつて「ラク・ムラール」と呼ばれた交易都市の守りの要だった。
だが時代は変わり、戦争と干ばつによってこの地は静かに朽ちていった。
いまや人の気配はなく、壁の隙間から風と砂が舞い、赤く染まった空だけが見下ろしている。

そんな中、毎日黄昏時になると、どこからともなく姿を現す男がいた。
彼は無言で門の前に立ち、遠くを見つめるだけで、誰にも話しかけることはなかった。

彼の名は「サミール」。かつてこの都市を守る兵士であり、
とある約束を果たせぬまま、最愛の人を戦火で失ったという。
「夕焼けの日に、帰ってくるから」
それが彼女の最後の言葉だった。

それから二十余年、彼は門を守り続けている。
人々は彼を「門番の幽霊」と噂したが、サミールは生きていた。
それは亡霊ではなく、待ち続ける者の祈りそのものだった。

ある日、門の奥から、砂埃を上げて一人の旅人が歩いてくる。
その旅人が誰なのか、彼がなぜ門の前に立っていたのか——
それは、この道の続きにある、黄昏の物語の始まりに過ぎない。

1
1
12
2025-06-20 00:00

 Momon Taruto


Comments (0)

No comments

Related works

No works to show