トーセンジョーダンその1（さされちゃう・その後・2）

合宿も１０回ぐらい修羅場に巻き込まれた気がするが何とか乗り越えて、俺はいよいよ今年最後のG１の準備をしていた。
暗い部屋でパチパチとキーボードの音だけが響き渡る…このチーム最後のレースだ、キーボードを打つ手も力が籠るというものだ。

「うぇ〜い、トレーナーまた部屋にいるし〜」
「ああ、ジョーダン」

ふと誰かドアを開けたと思ったらトーセンジョーダンがそこにはいた。

「何これ暗っ、目疲れるよ？」
「ああ、悪い悪い、つい、な」

気づけば時計の針は11時を過ぎていた。
就寝前にふと気づいたことがあってパソコンに向かったが…思った以上に俺は時間を過ごしてしまっていたらしい。

「ふぅん、まっ、ちょうどいいや」

近づいてくる。
笑顔のまま、腕を伸ばしてくる。
そしてそのまま俺は椅子に座ったまま俺は捕まった。まるで網に絡め取られる魚のように。

「トレーナー」
「な、なんだ」

吐息の熱ももうすぐ聞こえてきそうな距離、トレーナージョーダンはこれまでに見たことのないような…逃げ場をなくすような目で俺を見つめている。

「トレーナー」
「そろそろあたし、マジで行くよ？」
「福引券も当たったんしょ？」
「ど、どういうことだ」

確かにこの前のくじ引き、ジョーダンはいなかったが他の皆で引いたら…温泉宿のチケットが当たってしまった。
しかしあれは二人用だ、当然全員は連れていけない。
それはそれで悩みの種であるが…。

俺が尋ねるとジョーダンは口の端を歪めでニヤリと…いや、形容し難い笑みを浮かべた。
捕食される、なぜか俺はその笑みを浮かべて瞬間的にそう思う。

「クリスマス」
「楽しみだね」
「でも、今でもいっかな」

俺は机の下の緊急スイッチにゆっくりと手を伸ばし…その腕をジョーダンに掴まれる。

「ま、まて、落ち着こう、ジョーダン、何が望みだ」
「んーん」

トーセンジョーダンは首を傾げて少し黙った後。

「トレーナーっしょ」

そう言ってさらに迫ってくる。
やばい。心の非常警報が鳴り響く。
メーデー！メーデー！
たづな！たづなさん！
へループ！