暁光の唄

真実の愛のキスで呪いがとけ、薄暗い森に光がさしこみました。 その不思議な光を浴びた人形の少女の手が節のない滑らかな人間の手になり、とても悲しいお別れをした愛しい人達も次々と目を覚ましました。まるで、ただ眠っていたかのように。 陰鬱だった森には、もはや死の影はありません。きらきらと落ちる木漏れ日の下、お姫様たちが楽しそうに笑っています。  美しい銀髪をふわりとなびかせた青年は、初めて見た光の溢れる朝に眩しそうに目を細めたあと、ずっと焦がれていた彼女に駆け寄ると思い切り抱きしめました。幼い頃は解らなかった感情が何なのか、今ならはっきりと解ります。 そうして長い道のりの末に結ばれた二人は、いつまでも幸せに暮らしました。もちろん魔女と呼ばれた彼の母と、人形だった少女も一緒に。
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2010-12-17 06:13

 緋村


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