第二波迫る!

森下は再び懐中時計を引っ張り出した。

「時間が無いな、通信兵、暗号文用意。内容、」

 すらすらと予定されていた台詞のように森下は指示を出した。

「第八護衛艦隊司令森下発、第二艦隊司令伊藤整一殿宛。我が艦隊は貴艦隊前面に出た後一旦後退、貴艦隊北へ回り込み、背後から敵編隊を対空砲撃したし。即答願う。」

 無線封鎖など今や必要が無い。連合軍が暗号を解く間もなく戦闘が始まるであろう。今は緊密な連携を促す具体的な意思を伝える必要があった。

「大和」の伊藤長官は森下の畏友であり良き理解者であったし、「大和」艦長有賀幸作は森下の同期で親友でもあった。

天一号作戦の作戦指揮は基本的に第二艦隊司令にあったが、基本的に対空・対潜作戦立案は、「伊吹」らの強力無比な電探や水探などの情報分析に優れている第八護衛戦隊司令の森下が発言することが多く、伊藤整一少将も概ねそれにそって、作戦行動を取った。第二艦隊はまさに「御大尽」であった。

 さておき、ごく短い返信は、すぐに帰ってきた。伝令より受けた副長がケレンみ溢れさせて高らかに読み上げる。
「許可ス我進路変更ナシ 我トラアナニハイラン」

 艦橋の誰もがこの返答ににやりとした。

 が、森下艦長は硬い表情を変えず、遠く伊藤長官の姿を熱い気持ちで心の中で拝した。そして艦長席に戻り窓枠に軽く両手をかけると次の命令を指示した。

「全艦 対空戦闘準備。」

 艦橋内で復唱がこだまし、各伝声管、及び艦内スピーカーで放送されると既に戦闘配置を整えていた「伊吹」の水兵たちは無言であるが色めき立った。

「副長、各艦に電信。」

 渡邉が通信室への艦内電話を取り上げる。

「「鞍馬」「富士」は我に続け。第一八駆逐艦隊は「満月」の指揮に従い行動せよ。」

 続けて

「「鞍馬」「富士」に告ぐ。直ちに最大戦速。方位二-八ー〇。」

 艦長に続いて渡邉が伝声管に「機関最大戦速、おもかーじ。よーそろー」と告げた時、「伊吹」は軽く身震いしたように感じた。    「彼方からの閃光#2」挿絵

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2008-09-06 21:05

 縹渺


Comments (5)

縹渺 2008-09-07 16:17

うごご、あんまり見つめられるとアラがwww「みちゃらめぇー」

山水辺 2008-09-07 13:31

なんかすごい・・・見入ってしまいます。

縹渺 2008-09-06 23:47

なんだ、のーむさんから貰ったのを真似して送ったんですよー。^^承認押すとこのようにイメージ同士が同時に掲載されてリクエストのサインは消えます

射澤 瑞 S.Izawa 2008-09-06 23:26

あら? イメージレスポンスなんちゃらってコメントがあったけど、開いたら消えた…

縹渺 2008-09-06 21:08

http://d.hatena.ne.jp/fismajar/20080906/1220698761の挿絵

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