かえってくるはずだったおにいちゃん

どこをさがしても おにいちゃんはいなかった やけのはらにたたずむ いっけんのちいさなれんがのいえ くろとはいいろしかのこっていない そのいえのなかのしゃしんたてのなかに ぼくとおにいちゃんがいた ぼくとおにいちゃんは わらっていた わらっているはずだった うでがいたい めがいたい あしがいたい おなかがいたい ちがいっぱいでた ほねがみえた おにいちゃんがさかなをかうためにほったにわのいけ あかいろのいけのなかに おにいちゃんとぼくは まえがみえなくなるくらいまで しずんでいった それでも それでも こんなにもあいたいのに おにいちゃんはせんそうからかえってこなかった 焼け野原に佇む一軒の小さなレンガの家の中、僕は一人。かえってくるはずだったおにいちゃんを思い出の写真立ての中に閉じ込め、僕も、かえってこなかったおにいちゃんの元へと向かった。もう、絶対に離れないでね、おにいちゃん。
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2011-01-18 00:17

 針と糸


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