心からありがとウサギ
ありがとウサギなどというウサギはこの世にいない。どの動物図鑑にも載っていない。にもかかわらず、存在する。誰もが知っている。この矛盾。この解答は簡単だ。「ありがとウサギ」は、種としての分類とは関係のない、ある1羽のウサギが努力の果てに得た姿である。ウサギは四足獣だ。大地を蹴る太い後ろ脚と、走るときの補助や食べ物を捉えるときに使う小ぶりな前足を持つ。姿勢は前かがみ。でも、このウサギは思った。餌をくれ、安全な住処を世話をしてくれる人間に対して思った。感謝を伝えたいと。 他のウサギは言う。「自らが愛玩するために本来の住処である草原を奪った人間に感謝など!」 でも、と思う。確かに本来の住処を奪われた。自然を取り上げ不自然の中に放り込まれた。でも。今、生きていられる。安心がある。他のウサギの言い分もわかるけど……だからといって、ただ恨むのは愚かじゃないだろうか。人間を恨みたいやつは恨めばいい。でも、与えられた安息を享受している事実を棚上げしたまま、ただ恨むなどと、それではウサギの義侠が廃るじゃないか。ああ、もしかして、私は……ただ、意志を示したいだけなのかもしれない。反応を示したい。与えられたら応えたい。一羽のウサギとして。だたそれだけだ。シンプルだ。「ありがとう」と言おう。言葉で、体で。でも、どうすれば? 相手は人間だ。ウサギの文法は通じない。人間はウサギの文法を知らない。なら、どうする? シンプルだ。努力しよう。毎日毎分毎秒だ。骨格を変えよう。体を絞ろう。表情を得よう。服を編もう。継続は魔法だ。積み重ねは奇跡だ。何度も心が折れかけた。何度も壁が立ちふさがった。馬鹿にし、邪魔をする他のウサギたち。弱い自分。扇情するニンジン。全て乗り越え、突破し、かじった。努力が敵だった他のウサギの心を変えた。死線の果てに待っていたのは、2本の足で立つ自分と、仲間が体毛で編んでくれたチュチュと、歯で削って作ってたんぽぽの花で着色した木の冠だった。――今日もいつもの時間に人間がやってくる。今なら言える。今なら示せる。いま一言いいたいのは、心からの「ありがとう」。
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ありがとウサギ
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2011-03-30 03:02
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