「あなたの好きそうな本用意したんだけど読む？」

彼女はその一冊を手に来たばかりの俺に話しかける。「これはわたしも気に入っててレミィにも読ませたんだけど・・・ほら、最近よく眠れないって言ってたじゃない？寝る前に読んだら多分ぐっすり眠れるわ、話も落ち着いてるしストーリーの進み具合もそんなに遅くなくて読者を休憩させるポイントもあるし、いいとおもうのだけれど・・・ハードカバーは嫌いだったかしら？確かにハードカバーは読みにくいしページがめくりにくかったりするけどその分耐久度が強くてここみたいに本の多い場所だととてもいいのよ。あ、それに落としたりしても全然平気だし。あ、それとも本のサイズが大きかったかしら・・・手に収まるサイズのもあったのだけれどそうすると厚みが増すじゃない？分厚すぎると読む気力がなくなったりしちゃうし読んでる途中で急に閉じたりしちゃうからこっちのが読みやすいかと思って。挿絵もおおくて場面の想像も容易だしキャラクターもそれぞれ個性があってわかりやすいし読み返さなきゃこのシーンの意味が分からない！なんてこともないし、一般的に使う文字ばかりだから読めないってことは無いと思うわ、だからといって子供向けって内容でもないし今の貴方にはちょうどいいと思うの。あ、いえ。実年齢とか精神年齢とかの話ではなくて、読んだあとにもう数年前に読んでいればなにかあったかもっていうような内容があるじゃない？そういう感じなの。心に何か残してくれるようなそんな本。実はねそれ、続編があるのだけどその一冊でも切りよく終わっているしその一冊で終わっても物語としては完成されているわ。でも続編を読むとより一層世界観が深く厚くなって作者の世界観に飲み込まれていく。この一冊ではわからなかった作者の目線とかそれぞれのキャラクターの心情、行動。あの時のセリフの理由とかがでてきて時間を忘れてその世界に入っていくような・・・・あ、ごめんなさい。この話はこの本を読み終わってからするべきだったかしら・・・続編も用意してあるから欲しかったらいつでもきてくれて構わないわ。・・・・試しにここで1章まで読んでいく？ここなら静かで集中もできるし、眠くなればベッドもあるわ。・・・今日は晩ご飯一緒に食べるのもいいわね。時間的にも今日は泊まっていくのがいいかもしれないわ。最近は物騒だもの。まあ、とりあえずは少し読んでみたら？帰るときは一言声をかけてちょうだい。」