幸せだなあと思った

「幸運でしたね、ここの病院ではあなたの大怪我なんてちょちょいのちょいですよ」

と、芝居がかった口調で語る妖怪。もっとも、大の部分はここに来る迄に何者かの罠によって付加したわけだが。

「あらあら、何が幸福なものか、と。大変不服な顔をしていらっしゃいますね。勿論あなたを里に連れて行くという事も出来たのでしょうが、残念。いえいえ、幸福。おそらく、その大怪我も、ここにいる理由も」

と、そこまで妖怪が大演説をかましたところで、「もー!」と透き通った声が制した。がらりと扉をあけて出てきた女性は、それはそれは美しい看護婦で妖怪で、長い髪の毛を垂らした兎だった。大丈夫ですか、と彼女の柔らかな手が私の体に触れた時、ぞくりと背筋から頭の先へと熱いものが走る。

やさしく抱きとめられた。

ふわりとやわらかな感触につつまれて、むずがゆいここちよさと、恥ずかしさと、爆発してしまいそうな心臓の高鳴りをさとられまいと、何か別な事を考えようにも。

「立っているのもやっとじゃないですか」

そんな言葉が私の思考を全てかっさらっていく。心配そうに覗き込む彼女の顔は、もう、なんと形容していいのか。ただただ頭が真っ白になり、何も言葉が出なくなり

ただただ、ただただ、

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2011-08-06 01:29

 にひまる


Comments (3)

にひまる 2011-08-12 02:32

うへへ

タチバナ 2011-08-07 21:26

美しい・・・

MYA 2011-08-06 07:20

羨ましいッッ!!

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