【腐】ちびギル×高校生菊 ネタと落書き
■ちびぷを見て妄想が駄々漏れて大変です。誰かかいてください。まじで。
■「お前、俺様の弟子にしてやるぜ!!」ありがたく思えよ!と唐突に張り上げられた高い声に、私は心底驚いたのを今でもはっきり覚えています。夢中になって読んでいたハードカバーの本から恐る恐る顔を上げると、冬の曇天の下でもきらきら輝く銀色の髪と、まっすぐに私を見るルビーみたいに赤い瞳があったので、私はもっと驚きました。きっとあの時の私は余程おかしな顔をしていたのでしょうね。自信満々に胸を張って、小さな手で私をびしりと指さすあなたが、けせせせせ!と笑っていながらもどんどん焦っていくのだけは、ひしひしと伝わってきました。生徒会に入っていて私よりも下校が遅い友人を、あの公園のベンチで待つのが私の日課でした。夏には麦茶、冬にはほうじ茶を入れた水筒と小説一冊があれば私はその時間を持て余したりはしませんでしたが、あなたが遊びに来てくれるようになってから思い返してみればそれはずいぶん味気なく感じるから不思議です。月曜日から金曜日まで、あなたは本当に毎日あの公園にやってきたので、私はてっきり近所に住んでいるのだとばかり思っていましたが、あのぼろぼろの黒い自転車で6つも駅を越えて来ているのだと何でもない事のようにあなたが教えてくれた時はまた驚きました。行きはまだしも帰りは暗くなるでしょう。私はもう心配でしたが、早く帰るように言っても「俺様が帰ったらお前が一人ぼっちになっちまうじゃねーか」と頑としてあなたは聞き入れてくれませんでしたから、せめてもと車輪に差し込むタイプの小鳥型の反射シートを差し上げたりしましたね。夏の途中でついに壊れたからと言って新しくなった赤い自転車の車輪にも、あの小鳥が止まっていたのを見てあなたは照れ臭そうにしていましたが私はとても嬉しかったです。そうしてあっという間に季節が巡って、ちょうど一年経つあたりで、親の仕事の都合で私はロンドンに引っ越しすることが決まりました。本当はもっと前から分かっていたことでしたが、いつどんな風に切り出したらよいか分からなくて、私は結局引っ越しをする一週間前に突然あなたにその事をお話してしまいました。喜怒哀楽をはっきり表すあなたですから、きっとそんな私にひどく腹をたてるだろうと思っていましたが、どこにどれだけの期間いるんだ、その間に帰ってくるのか、何年か後にはまたここに戻って暮らすのか、と順序立てて質問してくる様子は見たことがないくらい大人びていて、私は気押されてしまいました。転勤はきっかり5年と決まっていて、その後は日本に帰ってくるのだと答えると、そうかとあなたは呟いて、少しだけ俯いてしまいました。いつもは力一杯に動く小さな体が更に小さく感じられて、「手紙を書きますね」と咄嗟に言った私をあなたは睨みつけ、「住所も聞かない、言わない奴がか?」と静かな声で責めました。そうして私はやっと、本当にあなたにひどいことをしたと気付きましたが、謝ることすらできませんでした。私はずっと私に都合の良いようにあなたとの間に線を引いてきたくせに、こうしてあなたとの時間を手放そうともしませんでした。そこに違和感がなかったのは、まだ小さな子供である筈のあなたが、その線を守りながらそれでも強く私と一緒にいようとしてくれたからなのでしょう。ベンチに座ったまま情けなさに項垂れる私に、優しいあなたは「しょうがねーな。まあ弟子をフォローしてやるのは師匠の仕事だからな!」と笑って私と約束してくれました。「5年後の、そーだな1月24日にするか。お前、ここのベンチに座ってろ。俺様が会いにきてやるぜ!」それを聞いたら私は不覚にもじわりと視界がにじみそうになって、慌てて笑顔を作りました。きっとわざとらしくなったでしょうから、あなたがへらへらすんな!と怒るあの愛想笑いに見えたはずですが、あなたは怒りませんでした。「5年後に?」「おー!忘れんなよ!」一週間後の約束でもするみたいにあなたはにかっと笑いましたが、その年月はあなたの今までの人生の、おおよそ半分に相当する程のものです。きっとあなたは忘れ去るだろうと、その時私は確信していました。
成田空港に入国ロビーに立つと、懐かしい日本の空気にああ帰ってきたのだとふうと肩から力が抜けました。両親より一足先に、向こうの友人たちが催してくれたお別れパーティーに出たその足で私は日本に帰国しました。帰国の予定が1月と決まった時には何とはなしに、間に合ったら行ってみようかと頭を過った程度だったのに、いざ日程が近づくと、遅れていくスケジュールを詰めに詰めて、なんとか24日の夜に日本に到着する便のチケットを死守する自分に呆れました。異国の地で得たものはとても多くかけがえのないものでしたけど、辛い時やふとした時に頭をよぎるのはあの公園で笑うあなたでした。ごっこ遊びに過ぎなかったはずが、なかなかあなたは立派に師匠をやってくれていたのだなと、他人事の感心します。公園に行ったのは、あなたに会う為ではありませんでした。あの時線を引くばかりだった私に、それでも手を伸ばしてくれたあなたの誠意に応えたかった。ただそれだけで終わる筈なのに、あの頃私が腰かけていたベンチに座る男を見て、私の頭は真っ白になりました。
長い脚を行儀悪く組む男は私の母校のブレザーに黒のマフラーを巻いただけで、真冬だというのにコートも着ていません。ぺらりと文庫本のページを捲る手は私よりもずっと大きく骨ばっていました。どう見ても染めたようには見えない銀色の髪、あの特徴的な目は俯いて本に注がれているために見えませんが、ベンチの脇に留めてあるマウンテンバイクの後輪に、似つかわしくない小鳥型の反射板が公園のライトに照らされて光っていました。
「ギルベルト君?」
貴方はぱっと顔をあげると、ゆっくり一つ瞬いてから、よおと笑って本を閉じました。あたりはもう真っ暗で、日付だってあと数時間で今日が終わろうというところです。
「なんで待ってるんですか」
震える声で呟いた私ににやりと笑うと、
「俺様が帰ったらお前が一人ぼっちになっちまうじゃねーか」
とどこかで聞いたような事を言って、貴方は私を抱き締めました。
■「お前、俺様の弟子にしてやるぜ!!」ありがたく思えよ!と唐突に張り上げられた高い声に、私は心底驚いたのを今でもはっきり覚えています。夢中になって読んでいたハードカバーの本から恐る恐る顔を上げると、冬の曇天の下でもきらきら輝く銀色の髪と、まっすぐに私を見るルビーみたいに赤い瞳があったので、私はもっと驚きました。きっとあの時の私は余程おかしな顔をしていたのでしょうね。自信満々に胸を張って、小さな手で私をびしりと指さすあなたが、けせせせせ!と笑っていながらもどんどん焦っていくのだけは、ひしひしと伝わってきました。生徒会に入っていて私よりも下校が遅い友人を、あの公園のベンチで待つのが私の日課でした。夏には麦茶、冬にはほうじ茶を入れた水筒と小説一冊があれば私はその時間を持て余したりはしませんでしたが、あなたが遊びに来てくれるようになってから思い返してみればそれはずいぶん味気なく感じるから不思議です。月曜日から金曜日まで、あなたは本当に毎日あの公園にやってきたので、私はてっきり近所に住んでいるのだとばかり思っていましたが、あのぼろぼろの黒い自転車で6つも駅を越えて来ているのだと何でもない事のようにあなたが教えてくれた時はまた驚きました。行きはまだしも帰りは暗くなるでしょう。私はもう心配でしたが、早く帰るように言っても「俺様が帰ったらお前が一人ぼっちになっちまうじゃねーか」と頑としてあなたは聞き入れてくれませんでしたから、せめてもと車輪に差し込むタイプの小鳥型の反射シートを差し上げたりしましたね。夏の途中でついに壊れたからと言って新しくなった赤い自転車の車輪にも、あの小鳥が止まっていたのを見てあなたは照れ臭そうにしていましたが私はとても嬉しかったです。そうしてあっという間に季節が巡って、ちょうど一年経つあたりで、親の仕事の都合で私はロンドンに引っ越しすることが決まりました。本当はもっと前から分かっていたことでしたが、いつどんな風に切り出したらよいか分からなくて、私は結局引っ越しをする一週間前に突然あなたにその事をお話してしまいました。喜怒哀楽をはっきり表すあなたですから、きっとそんな私にひどく腹をたてるだろうと思っていましたが、どこにどれだけの期間いるんだ、その間に帰ってくるのか、何年か後にはまたここに戻って暮らすのか、と順序立てて質問してくる様子は見たことがないくらい大人びていて、私は気押されてしまいました。転勤はきっかり5年と決まっていて、その後は日本に帰ってくるのだと答えると、そうかとあなたは呟いて、少しだけ俯いてしまいました。いつもは力一杯に動く小さな体が更に小さく感じられて、「手紙を書きますね」と咄嗟に言った私をあなたは睨みつけ、「住所も聞かない、言わない奴がか?」と静かな声で責めました。そうして私はやっと、本当にあなたにひどいことをしたと気付きましたが、謝ることすらできませんでした。私はずっと私に都合の良いようにあなたとの間に線を引いてきたくせに、こうしてあなたとの時間を手放そうともしませんでした。そこに違和感がなかったのは、まだ小さな子供である筈のあなたが、その線を守りながらそれでも強く私と一緒にいようとしてくれたからなのでしょう。ベンチに座ったまま情けなさに項垂れる私に、優しいあなたは「しょうがねーな。まあ弟子をフォローしてやるのは師匠の仕事だからな!」と笑って私と約束してくれました。「5年後の、そーだな1月24日にするか。お前、ここのベンチに座ってろ。俺様が会いにきてやるぜ!」それを聞いたら私は不覚にもじわりと視界がにじみそうになって、慌てて笑顔を作りました。きっとわざとらしくなったでしょうから、あなたがへらへらすんな!と怒るあの愛想笑いに見えたはずですが、あなたは怒りませんでした。「5年後に?」「おー!忘れんなよ!」一週間後の約束でもするみたいにあなたはにかっと笑いましたが、その年月はあなたの今までの人生の、おおよそ半分に相当する程のものです。きっとあなたは忘れ去るだろうと、その時私は確信していました。
成田空港に入国ロビーに立つと、懐かしい日本の空気にああ帰ってきたのだとふうと肩から力が抜けました。両親より一足先に、向こうの友人たちが催してくれたお別れパーティーに出たその足で私は日本に帰国しました。帰国の予定が1月と決まった時には何とはなしに、間に合ったら行ってみようかと頭を過った程度だったのに、いざ日程が近づくと、遅れていくスケジュールを詰めに詰めて、なんとか24日の夜に日本に到着する便のチケットを死守する自分に呆れました。異国の地で得たものはとても多くかけがえのないものでしたけど、辛い時やふとした時に頭をよぎるのはあの公園で笑うあなたでした。ごっこ遊びに過ぎなかったはずが、なかなかあなたは立派に師匠をやってくれていたのだなと、他人事の感心します。公園に行ったのは、あなたに会う為ではありませんでした。あの時線を引くばかりだった私に、それでも手を伸ばしてくれたあなたの誠意に応えたかった。ただそれだけで終わる筈なのに、あの頃私が腰かけていたベンチに座る男を見て、私の頭は真っ白になりました。
長い脚を行儀悪く組む男は私の母校のブレザーに黒のマフラーを巻いただけで、真冬だというのにコートも着ていません。ぺらりと文庫本のページを捲る手は私よりもずっと大きく骨ばっていました。どう見ても染めたようには見えない銀色の髪、あの特徴的な目は俯いて本に注がれているために見えませんが、ベンチの脇に留めてあるマウンテンバイクの後輪に、似つかわしくない小鳥型の反射板が公園のライトに照らされて光っていました。
「ギルベルト君?」
貴方はぱっと顔をあげると、ゆっくり一つ瞬いてから、よおと笑って本を閉じました。あたりはもう真っ暗で、日付だってあと数時間で今日が終わろうというところです。
「なんで待ってるんですか」
震える声で呟いた私ににやりと笑うと、
「俺様が帰ったらお前が一人ぼっちになっちまうじゃねーか」
とどこかで聞いたような事を言って、貴方は私を抱き締めました。
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2011-11-15 05:47
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