ベンチ…

「がんばってこいよ！」
明るく励まし、自らはフィールドを離れベンチへと腰をおろした。見え透いた空元気は動揺を隠すための精一杯の演技であった。いつも自分が駆け回るスポットライトの当たるフィールド、端から眺めるそこはいつも以上に光輝いて見えた。もしかすると、このまま…。そう、このままベンチから抜け出せないかもしれない、そんな一抹の不安が彼の心を深く沈ませていた。ベンチ、ベンチ…、彼の頭の中をぐるぐると巡る。そうして彼は不安に抗うかのように小さく小さく呟いた。
「ダッシュ、トレイン…」