ウール氏へ愛を込めて捧げる罵倒

ナズーリン「まったく君にはほとほと呆れる。もう呆れるを通り越して無感動だ。どういう哲学を持っていればそんな趣向に辿り着くんだ？　答えなくていい。理解したくないからな。とりあえず客観的に自分を見てみることをお勧めするよ。
ああ、それも出来ないのか？　では状況を説明してやろう。君は往来の真ん中で人目も憚らずに自分よりも遥かに背の低い女に向かって地面に頭を擦りつけて嘆願しているんだ。しかもその内容が何だ？　罵って下さい？　まったく、恥ずかしいとは思わないのか？　ああすまない。思っていたらこんな行為はしていなかったな。とすると君は始めから常識の箍が外れていた訳だ。そんな人を目の前にして私が言うことを聞いてやると万に一つでも思ったのか？　一体どうすれば君の愚かさを解ってもらえるのだろうね？　もちろん私は知っているよ。この状況を見ている人々もおおよそ解るだろう。君が愚かな人間であることは火を見るより明らかだ。それが解らないのか？　ああ、解っていて放置しているんだね。なるほど、じゃあ私に出来ることは何も無いな。もっとも初めから君の為に時間を割こうなんて思っていなかったがね。そうだろう？　何故わざわざミジンコの為に慈悲をかけてやらねばならない？　おっと失礼。ミジンコに対してとんだ悪口を言ってしまった。明日の朝には世界中のミジンコが憤慨して私に襲い掛かってくるかもしれないな。だが許してくれ。君の愚かさをありのまま表現できる程の言葉を私は知らないんだ。それにしたって悪いことをしたな。君は今すぐにでも沼地にその見捨てられた枯木みたいなスカスカの頭を突っ込んでミジンコに詫びるべきだ。頭も冷えて一石二鳥だろう。願わくばそのまま水底で余生を過ごしてほしいね。ほら私は君の為に将来設計までしてやったぞ。君のような奴にまで知恵を分けてあげるなんて私はなんて優しいのだろう。その優しさが一片でも君に伝わるのならば、どうかこれ以上私に近づかないでくれ。馬鹿が伝染するとは迷信だろうけれど、万が一ということもあるからね。解ったか？　返事は？　まあ訊いてないけれど。では御機嫌よう。君と交わしたこの時間は私の人生の汚点だ」