ふたりはこいびと
みんなに愛されているこいつが意外ともろい奴なんだと、人の悩みも一緒に抱え込んでしまうような奴なんだと気付いた頃にはもう俺はこいつを愛おしく思うようになっていて、震える肩も指も吐息も俺が守ってあげたくなって、でも時間は俺達には全然寛容ではなくて、こいつと過ごす時間はもう半年もなくて、俺が卒業をして離ればなれになったなら誰がこいつに肩を貸してあげるんだと思うと胸が苦しくて、けど俺がこいつの隣に居続けることはいつかきっと枷になるであろうことはなんとなくわかっていて、ああ、なにも知らない振りをして、一生目をつぶって世界を消して、そのあと2人でキスをして、暗闇の世界でもどこでもこいつの肌の温度さえ知ることができるのならば、笑った声さえ聞くことができるのならば、それだけで。ただ、それだけで。 いつか迎える別れすらこいつとの想い出になるのなら愛おしいんだ。だって俺たちは拙いながらも愛し合っていたんだ。だから出会いに、いつかの別れに怯えたりなんかしないんだ。俺たちは、こいびとだったのだから。
288
322
7481
2012-04-28 04:07
Comments (0)
No comments