はじめてのやかんしょうかいにんむ

あらすじ ベルギカ周辺での超弩級ネウロイ討伐の後、現地に居合わせた服部軍曹は海軍広報部の宣伝に充ててはどうかとの思惑から、国内勤務せよとの令が下る。しかしながら、出先での初任務にて小型ネウロイを撃滅せんとする記録、及び人間関係構築に於ける成果が顕著であった。そこで、当人の育成を担当した坂本少佐の再三の進言により、再結成した501に編入との運びとなる。名門部隊へ扶桑からの2度に渡る新人配属に各国は些かの難色を示すが、501結成当初の協力体制を鑑みれば、ブリタニアやロマーニャ、ガリアはあまり強く物言いの出来る立場に無く、北欧系は静観、カールスラントにはガラント少将等の扶桑に交流のある人間が配置されていたため、服部軍曹はそのまま宮藤少尉と行動を共にする。また、事を荒立てぬようにと坂本少佐より言い含められ、公私共に尽力を余儀なくされたミーナ中佐の飲む胃薬の量は、以前より若干増える事になる。こうして晴れて501の一員となった服部軍曹は、持ち前の気質から気が張り詰め過ぎ、度々失敗を重ねてしまう。それらはどれも些細なものであったが、服部軍曹は矢張り気に病んでしまい、段々と溌剌さを失っていく。「空」に対して憧れを向けていた眼差しは翳りを見せ始めるが、その様子に気付く者が居た。宮藤少尉である。また服部軍曹が小さな躓きをした日の夜、就寝時刻間際に突如、宮藤少尉は服部軍曹の前に現れ、嫌がる手を引きながら滑走路へ走る。そこには夜間哨戒へ向かおうとするリトビャク中尉が支度を整えており、なんとその任務へ同行しろと言う。そもそもそんな命令は出ておらず、更に夜の空など飛んだ経験の無い服部軍曹は不安をありありと顔に出してしまうが、3人でなら、と誘導する宮藤少尉に流され、共に発つ羽目になる。初めの内は夜の雰囲気に呑まれ、上手く機体を制御出来ずに居た服部軍曹。最早脳内が混乱の極に達そうという時、寄り添った宮藤少尉とリトビャク中尉の暖かな両手に包まれ、不意の事態ながら服部軍曹は今一度視線を前へと投げかける勇気を手にする。いつもとは違った表情を見せる「空」へ戸惑いながらも、険の張った顔は次第に綻び、また新たな「空」に対する思いを、服部軍曹は見付け出す転機となった。奇しくもその日は3人の誕生日であり、隊長室のミーナ中佐と坂本少佐は、夜半の空に棚引く航跡を穏やかな表情で眺めていた。　3人ともお誕生日おめでとう!