ハピバ!銀さん!【銀土】※テキスト付
いやいや、わかってますよ。
副長さんがお忙しいのは。
天下の国家公務員の、しかも役職者様だ。
お国の為に年がら年中休日も祭日も返上して、ひたすらお仕事ですよ。ご立派なことです。
俺だってね、一応社会人ですし?こう見えても個人事業主ですし?社会の厳しさぐらいは理解している
つもりですよ。
ましてや組織なんぞに所属したら仕事の前で自分の意思なんて通用しないことはざらと在る。
子供との約束を断腸の想いで破らざるを得ないお父さんの苦しい胸のうちだってわかるつもりだし。
街中で大事にしている彼女に「私と仕事、どっちが大事なの!」なんて泣かれてる野郎を見た日には、
イヤイヤイヤ、次元が違うんだよ、そもそもそんなもの比べる問題じゃないんだよとか、内心ちょっと
彼氏に同情してしまう程度の性根は持ち合わせているんですよ。マダオとはいえ。
とはいえ、だ。
若干ながら、そう言いたくもなる彼女の気持ちもわからないでもない、とか。
……いや俺、彼女じゃなくて彼氏ですからね。
…それはねぇだろ、と己の苛立ちに我ながら情けないと自分に呆れそうになる。
かれこれ2ヶ月ほど副長さんと遊んでいない。
いや、何回かは会ったりはしたんですよ。
翌日休みだというので飲み屋から始まるデートをしていたら、開始早々10分で奴の携帯に緊急事態だ
と電話が掛かってきてわりぃとそのままおじゃんになること2回、直接万事屋に誘って一緒に飯を食っ
ているところで携帯に邪魔をされたこと1回。それが1ヶ月前のこと。
その後は二人で会うことはない。
まぁあれですわ、俺の知る限り、奴の数少ない休日はここ2ヶ月全部潰れている訳ですわ。
ほんとストイックね。感心する。
稀にだけれど夜中に電話をしてみると、大層お疲れの様子が垣間見えて、なんかこっちまで疲れてくる
のですぐ切ることになる。
…俺、なんか邪魔してね?
なんというか、俺達の関係についてまで疑問を覚えるようになってくる。
俺は好きだよ、土方君。
今となっては馴れ初めだのを思い返すのも面倒くさいけれど、爛れた恋愛しかしてこなかった自分が正
直こんなに、しかも野郎に嵌るとは思わなかった。
あー、まー、でも、ぶっちゃけ、べた惚れですよね。言いたかないけども。
奴がどう思ってんのかは知らないけども。
いや、思われてるよ、わかってるけど。
気持ちの重さって、あるじゃない。
……重いか?俺のほうが。
…淡白、何でしょうね、多分。奴のほうが。
万事屋の座り慣れた社長椅子にぐたりと凭れたら、幸せが尻尾を巻いて逃げ出しそうな溜息が口からも
れて出た。
机の上にある黒電話が目に入ったけれど、そこから目を逸らして頭をガリガリと掻く。
本当のところは、すごく心配でもあったりする。
殺しても死なねぇ奴なのはわかっているけども、マジ働きすぎなんじゃね?大丈夫なの?
さすがに無理もしているように思う。
そんなとこに、俺が会いてぇだの、触れてぇだの言ったらさ。
…いやまぁ、ホントそれ、邪魔ですよね。
……でも、会いてぇんだけど…。
…あー、もう、自分の乙女思考が嫌になる。なに銀さん乙女だったの?アラサーの野郎が恋愛で自分の
感情コントロールできないとかキモイキモイ、やめて。
奴は必死で仕事をしているわけで。お国のために。
…俺のことなど多分忘れて。
部屋の片隅にかけられた日めくりカレンダーが10月10日を示しているのが、なおの事こんな下らな
い感情を引き出すのだと思う。
馬鹿馬鹿しい。
俺も忘れていればいい。
こんなところで鬱々としているから下らないことを考えるのだという思いに至った俺は、パのつくチン
コでも弄りにいくかとそのまま万事屋を後にした。
*****
こういうときに限って、見つけてしまうもんですよね。
パチンコ屋へ向かう途中、人だかりができているので何事かとちらりと覗いてみれば、事件でもあった
のか見慣れた黒い制服を着た仰々しい野郎どもがばたばたと何かの処理をするのに動いていた。
その制服を見るとつい探してしまうのはまぁ仕方がない話のだけれど。
あまりいるとは思っていなかったのに、群集の輪の中に見つけてしまった。
さっきから頭の中をグルグル占拠していた奴の姿が人ごみの向こうに見える。
奴はなにやら、隊士に指示を出しながら小難しそうな顔をして書類をめくっていた。
……何だ、元気そうじゃん。
顔色もそれほど悪くない。
その姿をしばらく遠巻きに眺めていたのだけれど、ふっと息をついて俺はその場から踵を返した。
悶々とした思いは、姿を見たことでかほんの少し和らいだ気がする。
あれだけ忙しそうなのだから、俺の存在など忘れられていても仕方がない。
まぁそれでもいいかと。
ずっと会えないわけじゃなし。
落ち着いたら思い出すだろうと。
何も浮気をされているわけでもねぇしなと思うと自嘲気味に笑みが浮かんだ。
そんな暇がなさそうなことだけは俺が一番よく知っている。
気も晴れたところで、さてパチンコだと人混みの外に足を向けた。
…と、ふいに、後ろからガシリと肩を掴まれ動きを阻まれた。
なんだと驚いて振り返ると、副長さんが息を切らせて瞳孔の開いた濃紺の瞳で俺を見上げていた。
「…んぉ、びっくりした。どした?仕事だろ」
「……」
久しぶりに間近で見る土方君の姿がうれしくない訳ではない。でもまさか来るとは思わず目を見張る。
肩で息をしながら俺をじっと見ていた奴は、徐に俺の腕を掴んでぐいっと引っ張った。
「んぁ、ちょ、なに?」
「……こい」
なんだなんだと引かれるままについて行けば、奴はずんずんと細い道を入りこんでいき、仕舞いには人
影がない路地裏へと連れ込まれた。
「…なぁに~?土方くん、こんなところに連れ込んで、期待しちゃうじゃない、の…、っ」
ニヤニヤと奴を見て、
ふざけた口調で冗談のつもりで言っていたのに。
胸倉を掴まれてそのまま唇を押し付けられた。
<続きはイラストクリック>
副長さんがお忙しいのは。
天下の国家公務員の、しかも役職者様だ。
お国の為に年がら年中休日も祭日も返上して、ひたすらお仕事ですよ。ご立派なことです。
俺だってね、一応社会人ですし?こう見えても個人事業主ですし?社会の厳しさぐらいは理解している
つもりですよ。
ましてや組織なんぞに所属したら仕事の前で自分の意思なんて通用しないことはざらと在る。
子供との約束を断腸の想いで破らざるを得ないお父さんの苦しい胸のうちだってわかるつもりだし。
街中で大事にしている彼女に「私と仕事、どっちが大事なの!」なんて泣かれてる野郎を見た日には、
イヤイヤイヤ、次元が違うんだよ、そもそもそんなもの比べる問題じゃないんだよとか、内心ちょっと
彼氏に同情してしまう程度の性根は持ち合わせているんですよ。マダオとはいえ。
とはいえ、だ。
若干ながら、そう言いたくもなる彼女の気持ちもわからないでもない、とか。
……いや俺、彼女じゃなくて彼氏ですからね。
…それはねぇだろ、と己の苛立ちに我ながら情けないと自分に呆れそうになる。
かれこれ2ヶ月ほど副長さんと遊んでいない。
いや、何回かは会ったりはしたんですよ。
翌日休みだというので飲み屋から始まるデートをしていたら、開始早々10分で奴の携帯に緊急事態だ
と電話が掛かってきてわりぃとそのままおじゃんになること2回、直接万事屋に誘って一緒に飯を食っ
ているところで携帯に邪魔をされたこと1回。それが1ヶ月前のこと。
その後は二人で会うことはない。
まぁあれですわ、俺の知る限り、奴の数少ない休日はここ2ヶ月全部潰れている訳ですわ。
ほんとストイックね。感心する。
稀にだけれど夜中に電話をしてみると、大層お疲れの様子が垣間見えて、なんかこっちまで疲れてくる
のですぐ切ることになる。
…俺、なんか邪魔してね?
なんというか、俺達の関係についてまで疑問を覚えるようになってくる。
俺は好きだよ、土方君。
今となっては馴れ初めだのを思い返すのも面倒くさいけれど、爛れた恋愛しかしてこなかった自分が正
直こんなに、しかも野郎に嵌るとは思わなかった。
あー、まー、でも、ぶっちゃけ、べた惚れですよね。言いたかないけども。
奴がどう思ってんのかは知らないけども。
いや、思われてるよ、わかってるけど。
気持ちの重さって、あるじゃない。
……重いか?俺のほうが。
…淡白、何でしょうね、多分。奴のほうが。
万事屋の座り慣れた社長椅子にぐたりと凭れたら、幸せが尻尾を巻いて逃げ出しそうな溜息が口からも
れて出た。
机の上にある黒電話が目に入ったけれど、そこから目を逸らして頭をガリガリと掻く。
本当のところは、すごく心配でもあったりする。
殺しても死なねぇ奴なのはわかっているけども、マジ働きすぎなんじゃね?大丈夫なの?
さすがに無理もしているように思う。
そんなとこに、俺が会いてぇだの、触れてぇだの言ったらさ。
…いやまぁ、ホントそれ、邪魔ですよね。
……でも、会いてぇんだけど…。
…あー、もう、自分の乙女思考が嫌になる。なに銀さん乙女だったの?アラサーの野郎が恋愛で自分の
感情コントロールできないとかキモイキモイ、やめて。
奴は必死で仕事をしているわけで。お国のために。
…俺のことなど多分忘れて。
部屋の片隅にかけられた日めくりカレンダーが10月10日を示しているのが、なおの事こんな下らな
い感情を引き出すのだと思う。
馬鹿馬鹿しい。
俺も忘れていればいい。
こんなところで鬱々としているから下らないことを考えるのだという思いに至った俺は、パのつくチン
コでも弄りにいくかとそのまま万事屋を後にした。
*****
こういうときに限って、見つけてしまうもんですよね。
パチンコ屋へ向かう途中、人だかりができているので何事かとちらりと覗いてみれば、事件でもあった
のか見慣れた黒い制服を着た仰々しい野郎どもがばたばたと何かの処理をするのに動いていた。
その制服を見るとつい探してしまうのはまぁ仕方がない話のだけれど。
あまりいるとは思っていなかったのに、群集の輪の中に見つけてしまった。
さっきから頭の中をグルグル占拠していた奴の姿が人ごみの向こうに見える。
奴はなにやら、隊士に指示を出しながら小難しそうな顔をして書類をめくっていた。
……何だ、元気そうじゃん。
顔色もそれほど悪くない。
その姿をしばらく遠巻きに眺めていたのだけれど、ふっと息をついて俺はその場から踵を返した。
悶々とした思いは、姿を見たことでかほんの少し和らいだ気がする。
あれだけ忙しそうなのだから、俺の存在など忘れられていても仕方がない。
まぁそれでもいいかと。
ずっと会えないわけじゃなし。
落ち着いたら思い出すだろうと。
何も浮気をされているわけでもねぇしなと思うと自嘲気味に笑みが浮かんだ。
そんな暇がなさそうなことだけは俺が一番よく知っている。
気も晴れたところで、さてパチンコだと人混みの外に足を向けた。
…と、ふいに、後ろからガシリと肩を掴まれ動きを阻まれた。
なんだと驚いて振り返ると、副長さんが息を切らせて瞳孔の開いた濃紺の瞳で俺を見上げていた。
「…んぉ、びっくりした。どした?仕事だろ」
「……」
久しぶりに間近で見る土方君の姿がうれしくない訳ではない。でもまさか来るとは思わず目を見張る。
肩で息をしながら俺をじっと見ていた奴は、徐に俺の腕を掴んでぐいっと引っ張った。
「んぁ、ちょ、なに?」
「……こい」
なんだなんだと引かれるままについて行けば、奴はずんずんと細い道を入りこんでいき、仕舞いには人
影がない路地裏へと連れ込まれた。
「…なぁに~?土方くん、こんなところに連れ込んで、期待しちゃうじゃない、の…、っ」
ニヤニヤと奴を見て、
ふざけた口調で冗談のつもりで言っていたのに。
胸倉を掴まれてそのまま唇を押し付けられた。
<続きはイラストクリック>
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2012-10-09 23:59
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