「楽園にようこそ。」
そこは見知らぬ世界であった。見知らぬ、という言葉以外に形容する言葉を私は思い付かなかった。大自然に囲まれていて澄み渡った空はどこまでも果てしない。しかし私には、ここが自分の元いた「場所」でない確信がなんとなく、あった。気付けば目の前を行くこの少女に着いて歩いている。今のところ彼女の他に頼れそうな存在がいない、という理由もあるがそれ以上に、私は彼女に魅了されていた。美しさと愛らしさを織り交ぜ精錬したような少女が、時折こちらを振り向いては楽しそうな笑顔を向けてくるのだから仕方がないと思う。嬉々とした彼女が奏でるソプラノに誘われ時を過ごしている内に、気付けばもう陽が海に沈もうとしていた。その時、唐突に記憶が浮かび上がってきた。そうだ、私は深い森の中で遭難し自分の進む方向も分からぬまま歩いていたら、いつの間にか古びた神社の境内に立っていたのだ。もう廃れた神社には人はいないがもしかしたら神様ならいるかも知れない。そんな思いからすがるように財布の中身を賽銭箱に放り、金鼓を鳴らしたのだ。そこまで思い出したところで少女は立ち止まってこちらを振り向いた。沈みゆく太陽を背に煌めく輪郭。不意を突いたように、私はその日、初めて少女の声を聴いた…。
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2012-11-15 00:03
Comments (1)
ノリで文章書いてみたけど、アチチチ、火傷しちゃったテヘペロ。文才なんてものはなかった笑