ウルノス・ア=ロア


アレは天空に静かに佇む。
微かに褪せた淡い紺碧の6つの翼を羽ばたかせる事も無く、鳴きもせず、ただゆらゆらと雲のように目的も無く漂う者。

けれど、アレの視界に決して入ってはいけない。
あの6つの翼を羽ばたかせた時、アレは音よりも速く空を滑り、獲物の眼前に佇む。

アレの脚に捕まってしまったら、もう諦めるしかない。
乙女の腕の形をしたあの菫色の脚は獲物を絶対に逃がしはしない。

アレの食事中は、決して音を立ててはいけない。
アレの腹は満たされる事を知らない、次の食事として喰われたくないのなら静寂に身を置かなければならない。
アレが食事を終えて、大地に背を向けて天空に戻るまでは、動かない方が良いだろう。

何があっても、アレに攻撃をしてはいけない。
アレは黒い背骨の尾で、何よりも悲惨で残酷に獲物を殺す方法を知っている。

アレの名は「ウルノス・ア=ロア」。

天空に住む全ての捕食者』。

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2013-06-28 01:52

 浅葉 とろ


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