【リクエスト】POTION

紅蓮コーマさんリクエスト“薬のせいでおかしくなってそーゆー気分になっちゃってるにょたソーマが一人で発散しようとしてるところに主人公が来て喰われる”

　
「おまえ、男を抱いた事ある？」

向かいのソファでくつろいでいる上官ーー正確には元上官が、おもむろにそう訊いてきた。否、と答えれば「そうか」とだけ返された。纏っている紫煙が、一層濃くなったように感じた。

「あるんですか？」

逆に問えば、沈黙が帰ってきた。任務完了の報告、受付を呼びに行かせて待つ、なんとも静まり返った空間。

「べつに抱きたいと思ったことはないんだけどな」

煙草を灰皿に押し付け、彼が口を開いた。まだ続くのだろうか、とこっそり心の中で呟く。

「たとえば、何かに怯えているように身体をちぢ込ませているとき。たとえば、ひとりでこっそり、泣いてるのを見たとき。たとえば、このエントランスでみんなが楽しくやっているのを遠巻きに眺める、その口元がうっすら笑っている、それがふと思い出したように影を差す、それを見ちまったとき」

黒い髪を掻き上げながら、次の煙草に手が伸びる。咥えて火を付け深く吸い込む、そして吐き出す。

「そういうときに、無性にざわざわするんだ。壊したいのか、守りたいのか、俺にはわかんねえけど」

ソファにもたれた首がわずかに後ろを振り返り、天井を仰ぎ見る。

「アイツは、ときどきそんな感情を抱かせる…だろ？」

男が眉を寄せて静かに口元を上げた。姉とよく似た、慈愛に満ちた笑顔だった。それには応、と答えた。