兄様に翼が無くても
子供の頃、ふと悲しくなって泣いてしまった事がある。 妹が持っている翼を僕は持っていなかったから、いつの日か僕は妹と別れて違う場所に行かなくちゃいけないんだって。 しゃがみ込んで泣いている僕を、妹が後ろからぎゅっと抱きしめて言ってくれた。 「鏡を見て、兄様。こうやって身体を重ね合わせれば、兄様に翼が無くても一緒に逝けるよ」 背に隠れる妹の翼が僕から生えているように見えた。だけど、これは妹の翼。妹の小さくてか弱い腕では僕を抱えては飛べないから、いつの日か僕を包み込むこのぬくもりとお別れしなきゃいけないんだって強く実感してしまって、僕は……
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2013-10-07 03:12
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