【福死】成就記念【交流】

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　その日は些細なことで友達とケンカして、帰り道は一人だったんです。
　悔しくて悲しくて、本当はすぐにでも家に帰ってママに慰めてもらって泣きたかった。
　それでも家に帰れば弟がいます。半年前に生まれたばかりの弟はまだまだ手がかかって、ママは毎日お世話で大変そう。
　心配をかけるのも、弟ばかりに構うママを見るのも嫌で、いけない事だけど、その日はどこか寄り道しようって決めたんです。

　普段の通学路を離れて知らない道を歩いていると、ウィンドウにお人形がたくさん並んでいるお店を見つけました。
　お人形は可愛いお洋服を着ていて綺麗なお化粧をしていて、まるで生きてるみたいに丁寧に作られているんです。
　ケンカした悔しい気持ちも、ママを弟に盗られたようで寂しい気持ちも、全部忘れて、お人形をもっと見たいって、そんな気持ちでいっぱいになりました。
　お金を持っていないのに、子供だけでお店にはいったら、怒られるかな。ドキドキしながらドアを開けたのを覚えています。

「いらしゃい」

　薄暗い照明の店内に、そう、落ち着いた声が響きました。
　私、その時、時間が止まったのかと錯覚したほど、動けなかった。

　白い肌の人形が並ぶ中、その人自身も誰かに作られたんじゃないかって思うような綺麗な男の人が立っていました。
　立ち尽くす私を、追い出したり怒ったりせずに、その人は、ちゃんとお客さんとして迎え入れてくれたんです。

　その日は、ずっとフワフワした気持ちでした。
　少しのおしゃべりをして、ここにある人形は全部その人の手作りなんだって教えてもらって、お店にまた来ていいよって言ってもらって――…。
　ママにも友達にも内緒の居場所を手に入れた気持ちでした。

　別れ際に、その人は名前を教えてくれました。
　『草一郎』さん。
　口に出して呼んでみると、くすぐったい様な気持ちで思わず笑ってしまいました。

　その時はまだ気づいてなかったけど、思えばその時からもう始まっていたんです。
　私、大人の男の人に、恋をしたんです。

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素敵な関係をありがとうございます！
可愛いお人形風の服はこちらのillust/41134963イラストからデザインお借りしています。
何か問題ございましたら、お手数ですがメッセージなどでお願いします。

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荒井草一郎さん[illust/40716981]
篠岡もも[illust/40669921]

【福死】成就記念【交流】

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