主人公のための6つの鏡(最終更新170503)

今更ですがVNVが好きすぎて色々考えたものをまとめました。追加シナリオや他のアパシー作品は見ておりませんので矛盾点などあるかもしれませんが、個人の感想として楽しんでいただけたら幸いです。

■■以下、キャプションにて考察の追加があります。読むたびに新しい発見があるのでその都度メモしていきたいと思います。よろしければお付き合いくださいませ。■■

追記1:福沢さんの話について
風間さんの話は置いておいて、他の語り部達の話は一文一文に意味があり、それは全て七話目に収束します。
中でも福沢さんの話は複雑で、三つの話が同時進行して語られています。
その答えは彼女の話の冒頭にありました。それは猫のエプロンを着てボランティアをする「猫かぶり」
福沢さんが話したかったのは「他人と違う・他人と一緒」
真奈美ちゃんがしたかったのは「平穏の為に世界を偽る事」。
また、シャンプー教室へ向かう道中の「お花屋さん」は性的な意味を含む隠語で、サジタリウスの出所は施設地下で見た彼女らと同年代と思しき男の子の体内。
女性だったら入れられる側、男性だったらサジタリウスを出す側、になるのだと思います。

追記2:赤川君と荒井君(書き方ブレますがご容赦を)
坂上君のパソコンは彼の父がゴルフ・コンペの優勝商品として家に持ち帰ったものだ。
坂上君にとってのパソコンとは父の象徴である。
赤川君とは『スクール・デイズ』を満喫していた時の坂上君の事であり、それを本来は自分のものであるとして奪おうとした荒井さんとは『日常』を失った後の坂上君自身である。
赤川君と荒井さんの対立は、坂上君が過去の自分を妬み、責める為に見た夢である。

幸福を感じるのは自分と他人を比較した時ではなく、今の自分と過去の自分を比較した時だと思う。
他人の不幸を測る物差し等誰も持ち合わせていはないからだ。

追記3:坂上君とその家族について
坂上君が夕飯直後であるにも関わらず「一昨日から間食事をしていない」と思ったのは、本当に食事をしていなかったからである。
ここ数日の食事で、彼には好物のカレーの味が分からなかったし、父のゴルフ・コンペのお祝いで出されたごちそうも味気なく感じられた。夢の中で味を感じることは稀である。
家族三人での夕食中、笑い合う両親とは対照的に、坂上君の気持ちはどんどん沈んでいく。
食事の前は家族が笑うと自分も嬉しくなったのに、味のしない料理を食べた事で、坂上君はこの団欒が「虚構である」という現実に気づかされたのだ。
ここにいるのは父でなく、母でなく、また自分でも無いのだと。
坂上君は食事の前、自室に入り、ベッドからパソコンを眺めている。
家族三人の団欒は、全て坂上君の過去の記憶が見せた夢であり、実際の坂上君はそれを画面の外側から眺めていたに過ぎないのだ。
パソコンを箱から出した彼は、専門用語だらけの説明書に目を通し、配線を繋ぎ、添付されていた三枚のディスクを順に起動していく。
家族三人のデモ・ムービーを再生する為のこれら一連の行為は、魔術書を読み、魔法人を描き、悪魔を召還した綾小路君の話に似ている。各語り部の話は、坂上君の行動をなぞった七不思議である。
また、坂上君をパソコンの内と外に分離させ空間を隔てることで、ストーリーを追っている読者もまた、坂上君の一人なのだとする意図が読み取れる。
複線として、坂上君は前日に「何を考えているのか分からない笑顔で微笑んでいる自分を見る夢」を見ている。

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2014-08-31 00:56

 ヒダリ


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